Friday, November 30, 2012

hungry, thirsty, ready - 日本語にない形容詞


英語の形容詞のいくつかの翻訳語はどうもしっくりしない。



hungry  お腹(なか)がすいている

thirsty   のどが渇(かわ)いている

ready  準備ができている

以 上の三例の日本語は形容詞ではなく、主語を持つりっぱな文になっている。 特に、<I am hungry.> は日本語でなんと言うのか?と幾度か聞かれただことがあるが、説明にこまった。直訳< お腹(なか)がすいている>は長すぎるのだ。丁寧に I <わたしは> を加えるととんでもなく長くなる。 したがって、日本語は難しい、ヘンテコな言葉ということになる。早々give up だ。逆に<I am hungry.>をできるだけ日本語の<お腹(なか)がすいている>に近く、なおかつ英語らしいのは I have a empty stomach. だろう。

問題は日本語には hungry に相当する形容詞がないのだ。hungry は<お腹(なか)がすいている>状態を示す形容詞なのだ。中国語(普通語)にはある。<饿>だ。

 I am hungry. = 我饿了。 


極めて短い。<了>は何らかの発話者の<気持ち>含める語気助詞なので、特に<気持ち>を含めない、中立的な発話では主語を含んでもたかだか二語の<我饿>でいい。英語より短い。

私の住む香港の広東語は<肚饿>で<主題>の<おなか>の意の<肚>を示すのが普通。ただしこれも<肚(to)>は一音節。

広東語の I am hungry. = 我肚饿(了)。

これぞまさしく、<わたしはお腹(なか)がすいている>で主語、主題、形容詞がそろっている。

<饿>に関連しては<ひもじい>、<飢(う)えている>という大和言葉があるが、いまは<お腹(なか)がすいている>の意味はなくなっている。

ドイツ語では Es mich hungert. (または Ich habe Hunger. か)

と言い、また違った表現方法だ。これ以外にもまだありそう。



2.thirsty   のどが渇(かわ)いている 

これも hungry と同じで、thirsty に相当する形容詞が日本語にはないのだ。thirsty の一語で<のどが渇いている>状態を示す形容詞なのだ。日本語では<かわいている>だけではだめで、<のどが>が要る。

中国語(普通語) I am thirsty. = 我渇(了)。 

I have a empty stomach. にならえば I have a dried throat. だ


3.ready 準備ができている

The meal is ready.  食事の準備ができいる。

I am ready to go. (私は)行く準備ができいる。(私は)を除いてもまだ長い。

ready の一語中国語形容詞はないようだ。主語(主題)-<準備>を示さないといけないのだ。

中国語(普通語、広東語) I am ready. = 我準備好(了)。 

以上の三例に共通していること


1)英語に相当する形容詞が日本語にない。

2)意味を正しく伝えるためには主語、主題(おなか、のど、食事、私)が必要。ただしこれは、日本語の方が分析的な表現、一般的、汎用的、抽象的、高度化された表現になっているのに対して、英語や中国ごは主語、主題まで含めた狭義、特殊化された表現と見ることもできる。

3)<xxしている>という言い方になっている。

日本ごの形容詞、形容詞用法はいくつかに分類できる。

a) 純形容詞  赤い、軽い
b) 形容動詞  静かな
c) 名詞(体言)+な 、 綺麗な
d) 動詞の連体形  私が読む本、あなたが来る時には
e) 動詞の連用形 + <て> + いる
f)  動詞の連用形 + 完了の助動詞(?) <た>

a) の純形容詞

これは名詞(体言)の修飾、名詞(体言)の叙述的形容ができる。

赤い花。あそこにある花はあかい。

b) の形容動詞

これは論議の余地がある文法用語。

<静か>+<な> 名詞(体言)の修飾、 <静か>+<だ>名詞(体言)の叙述的形容。

静かな部屋。
あそこにある部屋は静かだ。

c) の名詞(体言)+な (形容動詞と見なしてもよさそう)

<綺麗な>は(耳で聞けば同じだが)<きれいな>と書くと<きれい>+<な>でb) の形容動詞のように見られるが、これはあくまで<名詞(体言)+な>ではないか? <静か>は大和言葉であり、綺麗は外来語(漢語)だが、いづれも形容動詞としてあつかわれている。中国では形容詞、名詞の形態上の変化はない。綺麗を日本に移すと名詞は<綺麗さ>、形容詞は<綺麗な>になる。これは文法法則のように見える。では、中国語で<綺麗>を名詞と見た場合、中国語の<綺麗>と日本語の<綺麗さ>はどこが違う。日本語では、<綺麗>の名詞(体言)として<綺麗なこと>、<綺麗であること>も可能。では、<綺麗さ>と<綺麗なこと>はどこが違う?

<綺麗さ>は <綺麗>、<綺麗なこと>の度合い、程度、ほどを示す。<綺麗なこと>は抽象化した言い方だ。形容詞の特徴は文字通りあるモノ、ヒト、現象の状態を<形容する>ことにある。
キーワードは<さ>だ。<さ>が<度合い、程度、ほど>をを示しているのだ。したがって、<さ>は形容詞につく、さらに形容詞のみにつくと仮定しよう。そうすると、おもしろいことがわかる。

形容詞に<さ>をつけてみる。

よい ---> よさ (よいこと)
わるい ---> わるさ (わるいこと)
うつくしい ---> うつくしさ (うつくしいこと)
だのしい ---> たのしさ (たのしいこと、たのしみ)
うれしい ---> うれしさ (うれいこと)
くるしい ---> くるしさ (くるしいこと、くるしみ)


形容動詞に<さ>をつけてみる。

しずかな --->  しずかさ

おだやかな ---> おだやかさ
綺麗な ---> 綺麗さ
安全な  ---> 安全さ
危険な ---> 危険さ
大胆な ---> 大胆さ

例は以上にとどめるが、<さ>は形容動詞にもつき<度合い、程度、ほど>を示している。

ためしに動詞につけてみる。<さ>は<度合い、程度、ほど>を示す<体言化の辞>と見なせるので連体形に<さ>がつくだろう。

読む ---> 読むさ
買う ---> 買うさ
見る ---> 見るさ
蹴る ---> 蹴るさ
来る ---> 来るさ
する ---> するさ
なる ---> なるさ

<さ>は形容詞の場合と違って動詞の<度合い、程度、ほど>を示してはいない。

したがって、 <さ>は形容詞と形容動詞だけにつくとみなしていいだろう。<さ>は形容詞と形容動詞判定のリトマス試験紙だ。


d) の動詞の連体形 (形容詞とは見なされない)

これは日本語の特徴といえる。日本語の<目に見えない>関係代名詞用法。連体形の働きだ。

e) 動詞の連用形 + <て> + いる  (形容詞とは見なされない)

英語の<動名詞>のかたちににており、英語の<動名詞>には形容詞用法がある。

She has a pleasing face.  名詞の修飾
There is a playing field in front.  名詞の修飾


f)  動詞の連用形 + 完了の助動詞(?) <た>  (形容詞とは見なされない)

これも英語の<過去分詞>のかたちににており、英語の<過去分詞>には形容詞用法がある。ただし、受身の意味とは限らない。

I am pleased to meet you.  代名詞(I)の叙述的形容
He is an educated person.  名詞の修飾


上記の三例

hungry  お腹(なか)がすいている
thirsty   のどが渇(かわ)いている
ready  準備ができている

は e) の<動詞の連用形 + <て> + いる>だ。

すいている -->  <すく>の連用形 <すい(い音便)>+<て>+<いる>
渇(かわ)いている  -->  <かわく>の連用形 <かわい(い音便)>+<て>+<いる>
できている -->  <できる>の連用形 <でき>+<て>+<いる>

文法的には正しいのだが、いかにも長すぎる。

上記ほどではないが、下記の例もどことなくしっくりしない。

i) angry おこっている、腹が立つ
ii) sick 病気の
iii) shy  恥(は)ずかしい
iv) happy しあわせな、幸福な
v) different 違う、異なる
vi) sure  確かな
vii) safe 安全な
viii) dangerous  危険な

まあ、これくらいにして、検討をすすめる。

i) angry おこっている、腹が立つ

<おこっている>は上記三例と同じ構造。

おこっている -->  <おこる>の連用形 <おこっ(っ音便)>+<て>+<いる>

 <おこっている>は 名詞(体言)の修飾、 名詞(体言)の叙述的形容のどちらでも可。


おこっていいる太郎。
太郎はおこっている。

<腹が立つ>はd) の動詞の連体形。名詞(体言)の修飾の場合<腹の立つ>でもいい。

<腹が立つ>話だ。
<腹の立つ> 話だ。

名詞(体言)の叙述的形容の場合は<おこっている>と同じ文法法則で

<腹が立つ>の連用形 <腹が立(っ音便)>+<て>+<いる>。

太郎は腹が立っている。  (主語、主題構造)

<太郎は腹が立つ>は動詞による叙述となる。<太郎は腹が立っている>を <太郎は腹が立つ>の現在進行形と見ることもできなくはない。

ところで物理的に<腹>は<立つ>ことはできないので <腹が立つ>は慣用的な言い方だ。

<いかっていいる>もほぼ同じ。 <火がおこる>の<おこる>も関連語だろう。

 ii) sick 病気の


<病気の>は名詞(体言)の修飾用法。

病気の花子

名詞(体言)の叙述的形容は<病気だ>になる。

花子は病気だ。

<病気だ>を<綺麗だ>と同じく、形容動詞用法とみるか、<病気>(名詞、体言)+断定の<だ>と見るかは微妙だ。<病気>あるいは<病>は中国語では名詞かつ形容詞だ。前に述べたが日本語ではそうはいかない。日本語の文法法則に従わなければならばい。ところが、 名詞(体言)の修飾の用法では<病気>は<綺麗>と違って、<病気な>とは言えず<病気の>になる。-->病気の花子。<病気>は<綺麗>ほど形容詞化していないことになる。 しかし、

花子は病気。

でも、 突き詰めなければおかしくはない。突き詰めれば、花子=病気となっておかしくなる。病気は花子ではないのだ。ただし、<病気なの>は花子だ。

一方、大和言葉では動詞<やむ>、名詞(体言)<やまい>がある。これを使ってみる。

<やまい>の花子 - 問題ない
<やまい>な花子 - こうは言わない

<やんでいる>花子 - 問題ない
<やむ>花子 - こう言えなくもないが、場面は限られるようだ。<やむ>花子は問題ない。<やめる>花子はまったく問題ない。

叙述的形容

花子はやまいだ。

問題ないが、<病気>と同じで、 <やまいだ>を<やまい>(名詞、体言)+断定の助動詞<だ>とみるか、形容動詞用法とみるかは微妙だ。<やまいな>という形容動詞はない。

<やんでいる花子>や<花子はやまいだ>の大和言葉も捨てて置けない。<やむ><やまい>関連の大和言葉はかなりある。

やましい
やみあがり
xxやみ -   肺病やみ
なやむ、なやみ
なやましい
---
やみ(闇) - やみくも

iii) shy  恥(は)ずかしい

shy = <恥(は)ずかしい>ではない。 shy は<内気な>、<引っ込みじあんな>の意の形容詞だ。入り組んでいるには

1) shame = 恥(はじ)という語(名詞、体言)があること。

2) <内気な>、<引っ込みじあんな>は<ひかえめな>、<つつましい>、<でしゃばらない>といった日本では美徳とされている(好ましい)人の性格、文化的背景がからんでいる。文化論になるので、shy = <恥(は)ずかしい>ではない、shy は<内気な>、<引っ込みじあんな>の意としておく。

<内気な>は名詞(体言)の修飾用法

内気な美代子
内気の美代子

<内気な>は<な>をしたがえるので形容動詞とみなせる。<内気の美代子>は間違えではないが形容感が薄れるようだ。したがって、名詞(体言)の叙述的形容は

美代子は内気だ。

iv) happy  幸せ(しあわ)せな、幸福な

大和言葉の形容詞としてはごくよく使われる<たのしい>、<うれしい>がある。これらを使うと

名詞(体言)の修飾用法

<happy Daisy>は<幸せなDaisiy>の他に<たのしいDaisiy>、<うれしいDaisiy >ができるが<たのしいDaisiy>、<うれしいDaisiy >は<たのしい>、<うれしい>とい大和言葉の形容詞の形容詞を使っており、用法も間違いないが、いかにも翻訳調。

<たのしいDaisiy>は<cheerful Daisy> の訳ならよさそう。<うれしいDaisiy >は適当な英語訳がない。しいて訳せば、<Daisiy in delight>, <Daisy who seems happy>

おなじく、名詞(体言)の叙述的形容用法でも、

<Daisy is happy>は <Daisy は幸せだ>の他に<Daisy はたのしい>、<Daisy はうれしい>ができるが<Daisy はたのしい>、<Daisy はうれしい>は翻訳文なら許されるが、日本語としては少しおかしい。しいて訳せば、

<Daisy はたのしい> -->  Daisy is cheerful. Daisy is a cheerful person.
<Daisy はうれしい> --> Daisy seems happy. Daisy is in delight.

この<おかしさ>、特に<うれしい>について、はどこから来ているかといういうと、日本語の<うれしい>はあくまで、発話者自身の感情を表現するときはつかえるが、他人の感情の表現にはそのままではつかえず、<うれしいようにみえる>とか<うれしそう>という言い方になる。

 <たのしい>は<うれしい>とは少し違うようだ。


<たのしむ>と言う動詞はあるが、<うれしむ>という動詞はない。<たのしむ>の名詞(体言)は<たのしさ>(たのしみの程度(ほど))と<たのしみ>(たのしむこと)がある。。<うれしい>の名詞(体言は<うれしさ<>(たのしみの程度)だけだ。<うれしい>は純な形容詞だ。

v) different 違(ちが)う、異(こと)なる

<違う>、<異なる>とも動詞の連体形にようる修飾。形容詞ではない。<異なる>はややあらたまった言い方で、口語ではあまり使わない。 名詞(体言)化した<違い>、<異なり>も同じような状況だ。

違う人、場所、話
異なる人、場所、話

AはBと違う。
AはBと異なる。

日本語には different に相当する形容詞が見当たらない。

中国語では<違(ちが)う>、<異(こと)なる>普通まず使わない。使わないとさぞかし不便のようだが、<同じ><一様> の否定形<不同>と<不一様>を多用する、というよりはほとんどこれだ。 これは納得できる。なぜなら、中国語はこの<不>が大活躍する言語だ。この<不>がないと疑問文ができない。疑問文ができなければ、言語活動ができない。

有没有? 在不在? 同不同? 可不可以? 能不能?

vii) safe 安全な

safe は<安全な>。大和言葉では<たしかな>とか<しかりした>という形容詞があるが safe の意ではない。

<たしかな> sure に近い。<しかりした>は solid に近い。

名詞(体言)の修飾

 安全な場所


名詞(体言)の叙述的形容

この場所は安全だ。

 この二つ例を見ると、くりかえしになるが、 1)<安全な>を形容動詞とみる、2)<安全>(名詞、体言)+<な> および +断定の<だ>の二通りの解釈ができる。


<この場所は安全> とするとどうか?

日本語として問題ない。ではこの発話の中の<安全>はなにか? 安全は場所ではないので、この<安全>は形容詞になる。中国語と同じだ。

viii) dangerous  危険な

dangerous <危険な>。大和言葉では<あやうい>とか<あぶない>という形容詞ががありり dangerous の意に近い。

safe と同じことが言える。

危険な場所
あぶない場所

この場所は危険だ。
この場所はあぶない。

この場所は危険。

したがって、<危険>は形容詞になる。



sptt





Saturday, November 24, 2012

<to hold > と<持つ>



前回のポストで<特に純英語の to hold は to have 以上に意味が多様化している。 to hold はおもしろい動詞だが、ここは to have の話なので、別の場所で検討予定>と書いたので、忘れないうちにto hold を検討しておく。

<to hold>は<to have>と並んで<持つ>と訳される。さらには、<to have>との違いを示すために<手に持つ>とか<握(にぎ)る>とも訳される。だが、大きめのいい辞書やいいインターネット辞書をひくと、これら以外の意味がまさにいろいろ説明されている。末尾のhttp://www.thefreedictionary.com/hold のコピーの一部参照。

英語の<to have>には<長く持つ>、<持ちがいい>の<持つ>の意味は希薄だが、<to hold>にはこの意味がある。

例)(自動詞として) I hope the weather will hold.  天気が持てばいいと思う。

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<to hold>の多様な意味、根本的な意味、隠された意味。

1) <to hold>の多様な意味

自動詞として

I hope the weather will hold.  天気が持てばいいと思う。<持続すれば>、<変わらなければ>の意でもある。

This old rule still holds even now.   この古いきまりは今でも有効。以前と<変わらない>の意でもある。

他動詞としては

Taro holds the rope tightly (not to fall down).   太郎は(下に落ちないように)しっかりと綱を握る(握っている)。<to be having>ないが<to be holding>とはいえる。

Taro holds Hanako's hand tightly(so that she is not able to run away).    太郎は(花子が逃げないように)花子の手をしかりと握る(握っている)。

Taro holds his umbrella over Hanako to make her not to get wet. 太郎は(花子が濡れるないように)花子の上に傘をさす(さしている)。(持ち上げ続ける)。

Taro holds a great amount of money. 太郎は大金を持ち続けている。<太郎は大金を持っている>にもなるが、これでは Taro has a great fortune. と大差なくなる。 <to hold>には<長期間の持続>の意が内包されている(implied)。さらには、<大金がへらないよう、なくならないように持っている>の意も内包されていると見ることができる。

Hanako holds the women's marathon record.   花子は女子マラソンの記録を持っている(保持している)。
普通の訳では<持っている><保持している>になる。これも上の例と同じで、<長期間の持続>の意は必ずしもないが、<記録が破られないでいる>の意が内包されていると見ることができる。なお<保持>という中国語は<保(たもつ)と<持(もつ)>の組み合わせで、<保ち><持つ>となる。ごく簡単な辞書のもっとらしい説明は<保持=保ち持つ>だ。これでは何のことだか根本的には分からない。また中国語では、この<保持>のように似かよった意味の二つの動詞をつなげて<複合動詞>とすることは多い。動詞の語尾変化はないし発音も一語単音節で、日本語や英語に比べ極めて簡単。意味を広げること、一般化することになるが、一語による一般化とは違う。

例: 使用=使い用いる、応用=応じて用いる、利用=利を得るために用いる、用いて利を得る、私用=私的に用いる、公用=公(おおやけ)に用いる(注:現代中国語では<公用>は<公用トイレ>の公用の意)、適用=適当に(うまく、正しく)用いる、作用=?、これは難しい。文字通りで<作って用いる>だが、これでは何のことだかわからない。、実際には<力を作用させる、薬の作用>のようにつかわれる。英語では to apply, effect、influence  (名詞)。力(force)は<to apply force>。大和言葉では<力を働かせる>。<薬の働き>。

なお、中国語では以上の複合動詞は名詞にもなる。これは一般化がさらに進むことだが、曖昧さも増すことになる。

This small paper bag does not hold a heavy thing.     この小さい紙袋は重いものはもてない。
この<もたない>はまだ<持てない><持つことができない>の意になっているが、<この小さい紙袋は重いものは<もたない>とすると--><耐えられない>の意になる。次の例参照。

This small nail does not hold a heavy thing.     この小さい釘では重いものはもたない。
この<もたない>は<持たない>ではなく<耐えられない>の意になっている。これは始めの自動詞の用例と同じグループの意味だ。

Taro held his breath when he crept into Hanako's room. 太郎は花子の部屋に入るときに息を止めた(息をしないようにした)。

Hanako holds her tears.   花子は涙を(出てこないように)抑えて(こらえて)いる。

The meeting will be held this Friday.   We will hold a meeting this Friday. 会議は今週金曜日にある(開く、開かれる)。

We will hold a meeting this Friday. は We will have a meeting this Friday. でもいい。
The meeting will be held this Friday.   は The meeting will be had this Friday.  にはならない。

to take place という言い方がある。 The meeting will take place this Friday. だ。<to take place>は<場所を占める>という take の他動詞の言い方だが<to take place>で自動詞的になり日本語では<行われれる><催される><開かれる>など受身形、見方によっては自発形になる。<to take place>は単に<起こる>(自発)ではなく、何らかの意図、計画に基づいた行為だ。 したがって、We will hold a meeting this Friday. と The meeting will be held this Friday. は将来に向かって固定され、動かない、変更されない といった意味が内包されている。<to have>と違うところだ。

This glass bottle holds specual chemical substance.  このガラス瓶は特殊な化学物質を持っている。---> このガラス瓶には特殊な化学物質がはいっている。

以上の <to hold>の例を<to have>をのぞく他の動詞で検討してみる。

I hope the weather will hold.  -->         I hope the weather will remain good.
This old rule still holds even now.  -->       This old rule is still valid even now.
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Taro holds the rope tightly.    -->              Taro grips the rope tightly.
Taro holds Hanako's hand tightly. -->      Taro grips Hanako's hand tightly. 
Taro holds his umbrella over Hanako. --> Taro keeps his umbrella over Hanako.
Taro holds a great amount of money. -->  Taro keeps a great amount of money.
Hanako holds the women's marathon record.   -->  Hanako keeps the women's marathon record.
This small paper bag does not hold a heavy thing.  --> This small paper bag does not withstand a heavy thing. 
This small nail does not hold a heavy thing.    -->  This small nail does not withstand (or sustain) a heavy thing. 
Taro held his breath when he crept into Hanako's room. -->  Taro stopped his breath when he crept into Hanako's room.
Hanako holds her tears.   -->  Hanako tries not to allow her tears to come out.
これは簡単な相当語が見つからない。
The meeting will be held this Friday.   -->  The meeting will take place this Friday.
We will hold a meeting this Friday. -->  We plan to have a meeting this Friday.
This glass bottle holds specual chemical substance. --> This glass bottle contains special chemical substance.

以上の変換は一例。他の言い方もある。大きく分けると、次のようになる。

to remain(自動詞)  そのままでいる(ある)、xxのまま変わらない
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to keep (他動詞) 保つ、保持する
to grip        握る
to withstand     耐える
to stop        止める、やめる
not to allow     させない、やらせない
to take place     行われる
to contain      含む


右側の訳は一例。<to keep>は<to hold>と同じくいろいろな’意味がありそうだ。おもしろいには
<続ける>という意味がある<保つ、保持する>とともに <止める、やめる>があることだ。


2) <to hold>の根本的な意味、隠された意味

上記の<to hold>の相当語の日本語訳が<to hold>の根本的な意味の探求に役立つ。一方、これまで意図的に述べなかったが、<to hold>の用例は単に訳を付けるだけでなく、解説を加えた。これらの解説をよく読んでも推測がつくことだが、このあたりに<to hold>の根本的な意味がある。一見みえないので、隠されているといってもいい。
視点を少しかえるために、加えた解説のほうを強調して訳してみる。

自動詞では
I hope the weather will hold.  天気が<変わらなければ>いいと思う。
This old rule still holds even now.   この古いきまりは<以前と変わらない>。

他動詞としては

Taro holds the rope tightly (not to fall down)    太郎は<落ちないように>綱をを握る(握っている)。
Taro holds Hanako's hand tightly(so that she is not able to run away).    太郎は<逃げないように>花子の手を握る(握っている)。
Taro holds his umbrella over Hanako to make her not to get wet. 太郎は<濡れるないように>花子の上に傘をさす(さしている)。
Taro holds a great amount of money. 太郎は<大金が(へらないよう、なくならないように>持っている。
Hanako holds the women's marathon record.   花子の女子マラソンの記録<破られないで>いる。
This small paper bag does not hold a heavy thing.    <この小さい紙袋は重いものは<もたない>。
This small nail does not hold a heavy thing.     この小さい釘では重いものは<もたない>。
Taro held his breath when he crept into Hanako's room.  太郎は息を<しないようにして>花子の部屋に入った。
Hanako holds her tears.   花子は涙が<出てこないように>している。
The meeting will be held this Friday.   We will hold a meeting this Friday. 会議は今週金曜日に<変更なく>あるだろう。
This glass bottle holds dangerous chemical substance.  このガラス瓶には<まちがいなく>特殊な化学物質がはいっている。

最後の2例はこじつけのようだが、その他はおおむねおかしくない。これらに共通している意味は
自動詞用法ではでは<変わらない>、他動詞用法では<xxしないで><xxしないでいる><xxしないように><xxしないようにしている(ある)>だ。 <変わらない>は<変わらない>でやはり<xxない>だが、むしろこの<変わらない>が極めて重要。なぜなら、他動詞用法の方も、基本的にはこの引き続き<変わらない>という意味があるからだ。

太郎は<落ちないように>綱をを握る。 --> (引き続き)<落ちない>ようにしている。
太郎は<逃げないように>花子の手を握る。--> (引き続き)<逃げない>ようにしている。
太郎は<濡れるないように>花子の上に傘をさす。--> (引き続き)<濡れない>ようにしている。
太郎は<大金が(へらないよう、なくならないように>持っている。 --> (引き続き)<へらない、なくならない>ようにしている。
花子の女子マラソンの記録<破られないで>いる。 --> (引き続き)<破られない>ようにしている。
この小さい紙袋は重いものは<もたない>。 --> (引き続き)<破れ>ないようにはなっていない。
この小さい釘では重いものは<もたない>。 --> (引き続き)<とれない、はずれ>ないようにはなっていない。
太郎は息を<しないようにして>花子の部屋に入った。 -->(引き続き)<息をしない>ようにしている。
花子は涙が<出てこないように>している。 --> (引き続き)<涙が出ない>ようにしている。
会議は今週金曜日に<変更なく>あるだろう。 --> (引き続き)<変更ない>ようにしてある。
このガラス瓶には<まちがいなく>特殊な化学物質がはいっている。 --> (引き続き)<まちがいなく>あるようにしてある。

<xxて置く(おく)>は重要かつよく使われる言い方で、<to hold>の一部を代表している。

<キープ>して置く、<ホールド>して置くは<キープ>する、<ホールド>するでいいはずだがそこはやはり英語になりきれずに日本語の<xxておく>が加わっている。<メンテ(to maintain, maintenance)>はまだ英語で、<メンテする>とつかわっれているようだが<メンテしておく>が日本語らしい。

これは日本語だけでない。わたしの住む香港の広東語にもこれがある。<xxておく>は<住>(チュウ)だ。本来<住>に<xxておく>の意味があるのか、または単に発音用だけなのかは調べていないが、keep 住、hold 住はよく聞く。

さて特に注意したいのは

太郎は花子の部屋に入るときに息を止めた(息をしないようにした)。 ーー>太郎は息を<しないようにして>花子の部屋に入った。 --> 引き続き<息をしないないで>いる。

これはどういうことかというと、 <息を止める>前は<息をしていた>ことになる。引き続き<息をする>のは<to hold breathing>でもいい。間違いないところでは<to keep breathing>か。いづれにしても、すなわち、 <to hold >は<する>にしても<しない>にしても、より正確には、 <し続ける>にしても<しない続ける>(正しい日本語は<しないでい続ける>)にしても現状を維持することだ。これは物理の<慣性>の働きと同じだ。止まっているいるモノは力を加えない限り<止り続ける>、動いているモノは止めようとする力を加えない限り<動き続ける>。

結論

<to hold >の隠れた極めて一般化した意味は<慣性を表す>だ。<束縛>動詞、<縛りつけ>動詞とも言える。


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末尾参考

http://www.thefreedictionary.com/hold

hold 1  (hld)
v. held (hld), hold·ing, holds
v.tr.
1.
a. To have and keep in one's grasp: held the reins tightly.
b. To aim or direct; point: held a hose on the fire.
c. To keep from falling or moving; support: a nail too small to hold the mirror; hold the horse steady; papers that were held together with staples.
d. To sustain the pressure of: The old bridge can't hold much weight.
2.
a. To keep from departing or getting away: Hold the bus! Hold the dog until I find the leash.
b. To keep in custody: held the suspect for questioning.
c. To retain (one's attention or interest): Televised sports can't hold my interest.
d. To avoid letting out or expelling: The swimmer held her breath while underwater.
3.
a. To be filled by; contain.
b. To be capable of holding. See Synonyms at contain.
c. To have as a chief characteristic or quality: The film holds many surprises.
d. To have in store: Let's see what the future holds.
4.
a. To have and maintain in one's possession: holds a great deal of property.
b. To have as a responsible position or a privilege: held the governorship for six years.
c. To have in recognition of achievement or superiority: holds the record for the one-mile race; holds the respect of her peers.
5.
a. To maintain control over: Thieves held the stolen painting for ransom.
b. To maintain occupation of by force or coercion: Protesters held the embassy for a week.
c. To withstand the efforts or advance of (an opposing team, for example).
d. To maintain in a given condition, situation, or action: The storyteller held the crowd spellbound.
6.
a. To impose control or restraint on; curb: She held her temper.
b. To stop the movement or progress of: Hold the presses!
c. To reserve or keep back from use: Please hold two tickets for us. Hold the relish on that hamburger.
d. To defer the immediate handling of: The receptionist held all calls during the meeting.
7.
a. To be the legal possessor of.
b. To bind by a contract.
c. To adjudge or decree: The court held that the defendant was at fault.
d. To make accountable; obligate: He held me to my promise.
8.
a. To keep in the mind or convey as a judgment, conviction, or point of view: holds that this economic program is the only answer to high prices.
b. To assert or affirm, especially formally: This doctrine holds that people are inherently good.
c. To regard in a certain way: I hold you in high esteem.
9.
a. To cause to take place; carry on: held the race in Texas; hold a yard sale.
b. To assemble for and conduct the activity of; convene: held a meeting of the board.
10.
a. To carry or support (the body or a bodily part) in a certain position: Can the baby hold herself up yet? Hold up your leg.
b. To cover (the ears or the nose, for example) especially for protection: held my nose against the stench.
v.intr.
1.
a. To maintain a grasp or grip on something.
b. To stay securely fastened: The chain held.
2.
a. To maintain a desired or accustomed position or condition: hopes the weather will hold.
b. To withstand stress, pressure, or opposition: The defense held. We held firm on the negotiations.
3. To continue in the same direction: The ship held to an easterly course.
4. To be valid, applicable, or true: The observation still holds in cases like this.
5. To have legal right or title. Often used with of or from.
6. To halt an intended action. Often used in the imperative.
7. To stop the countdown during a missile or spacecraft launch.
8. Slang To have in one's possession illicit or illegally obtained material or goods, especially narcotics: The suspect was holding.
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sptt


















Friday, November 23, 2012

<to have> と<持つ>


<to have>と<持つ>は明らかにイコールではない。それではどこが違う?

<持つ>には大きく分けて二つの意味が或る。

1)英語<to have>の一部の意味

<to have>には<持つ>にないいくつかの意味がある。

2)<長く持つ>、体言化した<持ちがいい>の<持つ>だ。この<持つ>は自動詞。

<たもつ>は<保つ>と漢字で表すが、<持つ>との関連はあきらか。また、餅(もち)もご飯に比べて<長もち>するからではないか? 別途検討。

<to have>にはこの意味がほとんどない。これは <to last (long)>とか<to endure>とかが相当する。形容詞では<be durable>(長持ちする)がある。

1)英語<to have>の一部の意味と述べたが、それでは<to have>にはどのような意味があるか。

a)現在完了形をつくる

 これは意味というよりは文法機能だ。現在完了形というのが日本語にはないので、当然これに相当する日本語はない。あえて探せば、経験を表す現在完了形の日本語訳はたいてい<xxしたことがある>なので、下線部分が訳といえば訳になる。この訳はそれなりに意味がある。

例) I have gone to Paris. より正確には  I have been to Paris. か。 わたしはパリに行ったことがある。<行く>の過去形(または完了形)<行った> +  ことがある。 したがって、to have + gone (go の完了形)と形は似ている。

b)日本語の<xxがある>、いわゆる主語とか主題を加えれば<xxにはxxがある>という表現に相当する。

例)Taro has a house. 

直訳: 太郎は家を持っている。普通、こうは言わない。

日本語らしい訳: 太郎には家がある。残念ながら、こうもあまり言わない。

次の例はどうか。

 例)Taro has a younger sister.

直訳: 太郎は妹を持っている。普通、こうはまず言わない。

日本語らしい訳: 太郎には妹がある。 これは日本語らしい普通の言い方だ。

もう少し例をあげてみる。

Taro has money.   太郎は金を持っている。 (日本語らしい言い方)-->太郎(に)は金がある。
<に>はあったほうが正確のようだが(主題を示す)、ないほうが日本語らしい。また<に>があるなしでは微妙に意味が違う 。 (注1)

Hanako has a dog.   花子は犬を持っている。  --> 花子は犬を飼っている。 
<花子には犬がある>とも<花子は犬がある>とも言わない。<持つ>とは違う動詞を使う。
ただし、<花子が犬を手に持っている>場合は<花子は犬を持っている>と言える。

Ichiro has courage.   一郎は勇気を持っている。-->  一郎(に)は勇気がある。
これも<に>はあったほうが正確のようだが(主題を示す)、ないほうが日本語らしい。 また、別の人ではなく<一郎>をことさら取り上げる場合やは<に>を加えて< 一郎は勇気がある>と言うだろう。また、<は>を除いて< 一郎勇気がある>とすると、今度は<どこに、誰に> という質問に対する回答になる。

 Miyoko has a reason to do so.   美代子はそうする理由を持っている。 --> 美代子にはそうする理由がある。
これは日本語らしい普通の言い方だ。
 
Jiro had breakfast at home.  次郎は家で朝食を持った。--> 次郎は家で朝食をした。
<持つ>とは違う動詞を使う。

I have headache.  わたしは頭痛を持っている。 --> わたしは頭痛だ。 わたしは頭痛持ちだ。
<わたしは頭痛だ>は<今><最近>で、長期に頭痛をわずらってはいない。一方<わたしは頭痛持ちだ>は長期わずらい。

もう少し例を調べたほうがよさそうだが、とりあえず以上の例から推論すると、上に述べた<xxがある>、<xxにはxxがある>という表現(意味)以外に、

c)日本語では<持つ>とは別の動詞を使う。 さらに推論すれば、日本語の動詞に連用形は体言化するので(持ち -->持ち(がいい))、動詞の連用形を使う。<わたしは頭痛持ちだ>。

d) <わたしは頭痛だ>の例のように <xxだ>という表現(意味)。


--ー-

<持つ>の複合動詞をチェックしてみた。

持ちxx

持ち合う
持ち上げる (慣用もあり)
持ちいる --> 用いる
持ちきる (慣用もあり) 持ちきり
持ちくずす  (慣用)
持ちこたえる
持ち去る
もち逃げる --> 持ち逃げ
持ち出す  (慣用もあり)
持ちなおす (慣用もあり) 
持ちつける (主に慣用)
持ち運ぶ
持ち回る (慣用もあり) 持ち回り
持ち寄る

長持ちの<もち>は上記のうちでは<持ちこたえる>のみ。<持ちなおす> は慣用は長持ちの<もち>に関連ありそうだ。<健康持ちなおす>。

持ちいる --> 用いる。 <持ち>(入る)か?、<持ち><要る>か? ただし普通には(特に口語)<使う>が使われる、<用いる>はあまり用いられない。

xx持つ

あわせ(併せ)持つ
受け持つ (慣用)
掛け持つ  (慣用)  掛け持ち
取り持つ  (慣用)

英語の to have の影響からか重要そうに見える<持つ>複合動詞はさほど多くない。ということは、日本語では<持つ>は使いこなされきた重要語ではないということになる。英語の to have と比べれば明らかに重要語ではない。


関連語

<もてなす>は<持てる>の連用形<持て>+<なす>。<持てる>は<持ち><得る>で、<持つことができる>の意。したがって、<持て>+<なす>は<持つことができる>ように<する>で、<もてなす>に意に近づく。

<持つ>の使役形は<持たす><持たせる>。<もたらす>は<もたる>の使役形となるが、<持つ>関連で<持たる>という動詞はない。

<たもつ>は<保つ>と漢字で表すが、<た持つ>だ。この<た>は何か?

1)<手>は<た>に変わる。手綱(たづな)、たもと(手+もと)。<手>で<持つ>は自然な動作だ。 だが、<たもつ>の意は<手>で<持つ>という動作ではなく、<長く持つ>の<持つ>だ。

2)接辞の<た>。 たやすい。

<持つ>から離れてしまうが、この接辞らしい<た>関連では、

た + 折れる  --> 倒(たお)れる ?
た + 組む  --> たくむ、たくらむ (企む)?
た + 繰(く)る  --> たくる、 たぐる、 たぐり寄せる。 これは<手>か?
た + 加える --> 蓄(たくわ)える ?

3) <た>は<耐(た)える>、古語<耐(た)ふ>の<た>。<耐え>、<持つ> --> <た持つ>ではないか?

<保つ>は日本語ではさほど頻繁に使われないが、英語では to keep や to hold , さらに -tain (tenere) が後ろにつく to maintain、 to retain、 to sustain,、は<保つ>に関連しており、さらには to obtain (手に入れる)、to contain (含む、コンテナで保管)も関連と見なせ、やたら<保つ>関連の動詞が多く、頻繁に使われる。

特に純英語の to hold は to have 以上に意味が多様化している。 to hold はおもしろい動詞だが、ここは to have の話なので、別の場所で検討予定。


(注1)これは、微妙どころでなく、きわめて大きな違い。後日のポスト ”<ある>、戦争と平和の存在” その他<ある>関連のポスト参照。

sptt














Thursday, November 22, 2012

<いびきをかく>の考察


このポストは前回のポストで別途検討対象のひとつ<いびきをかく>についての考察。

<息をする>のは人が生存を続けるための必須の身体活動だが、空気と同じで、医者や看護婦を除けば現代人には普段は特に意識されていない。このあたりは昔の人の方がよほど注意が向いていたに違いない。<生きる>とは<息(いき)る>そのものだ。<生命に息吹>の<いぶき>も<息(いき)吹く>だから<いぶき>と<いびき>は息(いき)を介して関連がある。<息>関連の語をチェックしてみる。

息をする
息を吸う
息を入れる (慣用)、 息が入(はい)る (慣用)
息を吐(は)く
息を出す、息を吐き出す
息を吹く、息を吹き出す、 息を吹きかける、息を吹き返す、息吹(いぶ)く、息吹き、
息を止める、息が止まる
息を殺す
息を引き取る
息を凝(こ)らす
息を呑(の)む (慣用あり)、息をのみ込む
息をかける、 息がかかる (慣用あり)
息をつく、息がつけない。 <つく>は餅つきの<つく>で繰り返し<つく>動作だ。
息を抜く、息が抜けない (慣用)

息が合う
息が上がる
息が通(かよ)う、 息を通わす
息が弾む、 息を弾ませる
息が切れる、息を切らす
息が詰まる (慣用あり)、 息を詰める

息が長い
息が苦しい、息苦しい (慣用あり)

息まく(息巻く、息撒く)
息づく
息張る

息遣い

 <いきがる>は<粋(いき)がる>

<いきがいい>は<生きがいい>
<意気が上がる>と<息が上がる>は違う。
<意気込む>と<息をこめる>は違う。
意気投合、意気消沈は<息>とは関係ないようだ。

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さて、問題の<いびきをかく>だが、これは<いびき>は<息(いき)><響(ひび)き>だろう。確かに<響くような>な<いびき>は聞く。

上記の中に<息をかく>がない。<寝息を立てる>が普通だが、<寝息をかく>とも言えそうだ。<かく(掻く)>は何かを<引っかく>とか<水を掻く><雪を掻く>の<掻き進む><掻き取る>の意だ。 これらの動作無意識はある種の特別な音(多くは耳障りな音)が繰り返して発生することが多い。これからの連想が、<いびきをかく>になったのではないか。


sptt



Monday, November 19, 2012

かける, 掛ける、懸ける、 駆ける、賭ける、掻く、書く


<かける>は相当にいろいろ違った意味があり、調べるとまるでワンダーランドにはいり込んでしまったような感覚になる。

1.<かる>の<け>に イントネーションがあるもの (東京アクセント)

1)掛ける
2)懸ける
3)駆ける
4)賭ける
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5)掻く
6)書く

<掛ける>と<懸ける>が同類のようだが、他は関係なさそう。<掻く>と<書く>が同類であるのは前回のポストで次のように書いた。


線を<かく、書く、描く>という言い方もあるが、この<書く>は曲者で、漢字で<書く>と書くとなにか文明を感じさせるが、もとはといえば<引っかく>の <掻(か)く>で、<引き><掻く>だ。<書く>と<掻く>は同源だろう。したがって、字を<書く>のも基本的な動作は<引く>だ。大昔は<引っ掻いて> 線や、絵や、字を<かい>たのだ。


ただし、<掻く>も<書く> 上記の<掛ける>、<懸ける>、<駆ける>、<賭ける>とは関係なさそうだだが、本当は深い関係がある。大和言葉のおもしろいところだ。ただし、かなり込み入っている。

1)掛ける <to hook>、2)懸ける <to hang>

 英語ではごく大雑把に <to hook>(掛ける) と <to hang>(懸ける)の区別があるようだ。

to hook  - 何か(鉤のようなものが代表)に<かけて>引く動作。引っかける。自動詞であれば<かかる>、<引っかかる>。<to hook>はなまって、あるいは耳で聞いた発音で日本語では名詞の<ホック>になっている。

to hang  - 何か(鉤のようなものが代表)に<引っかけて>吊り下げる動作。自動詞ではれあば<かかる>、<吊り下がる>。

<ホック>は鉤で<かぎ>と読むが、<かく>の関連語だ。鍵(かぎ)も関連語で<鍵をかける>という。においは鼻に<引っかかる>ので、<かぐ>も関連語か。

<吊り下げる>の反対語は<吊り上げる>だが、魚は<釣り上げる>だ。<吊る>も<釣る>も語源は同じで、何かに<引っ掛け>ないとできな作業、動作だ。これから見ても、<引っかける>さらには<かける>は極めて重要な動詞だ。

したがって、さらに大雑把に見れば、<to hook> も <to hang> も<かける>でよさそうだ。

例文はいくらでもある。

いすに腰を掛ける。 (座るでもよい)
橋を掛(懸)ける。 (座るではだめ。据えるならよさそうだ)
はしごを屋根に掛ける。
屋根を掛ける。

虹がかかる。 (虹は掛けるわけにはいかない。)
雲が山の上に掛かっている。 (雲も掛けるわけにはいかない。)

時計を壁に掛ける。 関連語:掛け時計。
(耳に)メガネを掛ける。関連語:掛けメガネ。
(鼻に)メガネを掛ける。関連語:鼻メガネ。
衣服をハンガーに掛(懸)ける。関連語:衣紋(えもん)掛(懸)け

<かけて(掛けて、懸けて)> 安定させる。 座り(すわり)をよくする。 to sit, to set, to place, to stabilize

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手を掛ける。手を(引っ)掛ける。関連語:手がける。手掛かり。<手をかける>と<手がかかる>とは別の意味。
足を掛ける。関連語: 内掛け、外掛け、足掛かり。
首を掛ける。首が掛かる。(慣用) <首を懸ける(吊るす)>、<首を賭ける>に近い意味にもなる。
命を掛ける。命が掛かる。 <命を懸ける(吊るす)>、<命を賭ける>に近い意味にもなる。
釣り針に魚を掛ける。 釣り針に魚を引っ掛ける。 釣り針に魚が掛かる。

目を掛ける。 (慣用)
お目に掛ける。 関連語: お目に掛かる。
 xxを鼻に掛ける。(慣用)
思いを掛かける。 通常<思い掛けない>として使う。
<心を掛ける>はあまり聞かない。 xxを心に掛かける。 通常<心掛け>として使う。
<気を掛ける>もあまり聞かない。 xxを気に掛ける、xxが気に掛かる。 関連語:気掛かり

悪事 (ペテン、わな、いかさま、詐欺)にかける。ペテンにかける(かかる).

病気(風邪、心臓病、etc )にかかる。特別な場合を除き、<病気(風邪、心臓病、etc )にかける>とは言わない。<病気(風邪、心臓病、etc )になる>とも言う。

<かけて(掛けて、懸けて)>、(通常の、正常な)動きを止める、止めようとする。<かけ(掛け、懸け)>られて動きが止まる。いづれにしても、何かを<引っかける>、何かに<引っかかる>感じだ。

<医者にかかる>は少し違う。

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声を掛ける。
気合を掛ける。
号令を掛ける。
気合を掛ける。 <気合を入れる>ではない。
口を掛ける。 (慣用)
目を掛ける。 (慣用)
息を(吹き)掛ける。  <息が掛かる>は慣用もある。
不意打ちを掛ける。

魔法を掛ける。

網を掛ける。 <網にかかる>とは違う。
紐(ひも)を掛ける。 (これは場合によっては、ものがばらばらにならないように<しばる>意がある)
縄(なわ)をかける。
ワナを掛ける。(ワナを<し掛ける>とも言う)
 
賞金を掛ける。

問題を会議に掛ける。
ふるいに掛ける。
はかりに掛ける。

願をか掛ける。
望みを掛ける。

磨きを掛ける。
よりを掛ける。

<かけて(掛けて、懸けて)>何かの効果を得ようとする。 さらに例を挙げて検討を続けてみる。

税金をかける。税金がかかる。
負担をかける。負担がかかる。
重さをかける。重さがかかる。(加わる)
力をかける。力がかかる。
圧力をかける。圧力がかかる。
電圧(電気)をかける。電圧(電気)がかる。

鍵をかける。鍵がかかる。
パーマをかける。 パーマがかかる。
ブレーキをかける。ブレーキがかかる。
エンジンをかける。エンジンがかかる。
電話をかける。電話がかかる。
ラジオ(テレビ)をかける。 ラジオ(テレビ)がかかる。
脅(おど)しをかける。  脅(おど)しがかかる。

上記の<かかる>は状況によって可能とも受身とも自発ともとれる。

効果を得るために何かすることだ。<何かする>とは対象に<働きかける>ことだ。ここが重要なポイント。英語を使えば、最重要動詞は <to apply> だ。 <する>だから<to do>や<to make> でもよさそうだが、<to apply>が適している。作用から効果を得るまでの過程がある。ここがやや複雑なところ。 しつこいようだが、次のようになる。

<魔法をかける>は<魔法にかける>という言い方もある。<かける>の使い方のいい例だ。 英語には to spell という動詞がある。

前述の<医者に掛かる>は<医者に掛ける>ではないが、これだろう。いい効果を期待するのだ。 

力をかけると --> 変位(移動)、変形が生じる。
鍵をかけると --> 戸締りが厳重になる。
パーマをかけると --> 髪が波打つ(美的)効果がでる。その他の効用もあるようだ。
ブレーキをかけると --> 車が止まる。
エンジンをかけると --> 車が始動する。
電話をかけると  --> 離れていても連絡がつく。
ラジオ(テレビ)をかけると --> 番組が聴ける(見られる)。

相手に脅(おど)しをかけると --> やってもらえる。

ある人に魔法を掛けると --> その人をコントロールできる。

次のように見ることも出来る。

力をかける --> 力を用いる(使う) --> 変位(移動)、変形が生じる。
鍵をかける --> 鍵を用いる(使う) --> 戸締りが厳重になる。
パーマをかける --> パーマを用いる(使う)--> 髪が波打つ(美的)効果がでる。
ブレーキをかける --> ブレーキを用いる(使う)--> 車が止まる。
エンジンをかける --> エンジンを用いる(使う)--> 車が始動する。
電話をかける --> 電話を用いる(使う)--> 離れていても連絡がつく。
ラジオ(テレビ)をかけと --> ラジオ(テレビ)を用いる(使う)--> 番組が聴ける(見られる)。
相手に脅(おど)しをかけと --> 相手に脅しを用いる(使う) --> やってもらえる。
ある人に魔法を掛けると --> 魔法を用いる(使う) --> 人をコントロールできる。


用いる(使う)は英語の to use, to utilize, to apply (適用する) が相当する。これは<かける>のかなりの一般化だ。

さらに、ますますしつこいようだが、 次のように見ることも出来る。

力がかからない --> 力が働かない(効かない) --> 効果が得られない。
鍵がかからない --> 鍵が働かない(効かない) --> 効果が得られない。
パーマがかからない --> パーマが働かない(効かない)--> 効果が得られない。
ブレーキがかからない --> ブレーキが働かない(効かない)--> 効果が得られない。
エンジンがかからない --> エンジンが働かない(効かない)--> 効果が得られない。
電話をがかからない --> 電話が働かない(効かない)--> 効果が得られない。
ラジオ(テレビ)がかからない --> ラジオ(テレビ)が働かない(効かない)--> 効果が得られない。
相手に脅(おど)しがかからない --> 相手が働かない) --> 効果が得られない。
魔法がかからない --> 魔法が働かない(効かない) -->  効果が得られない。

少しおかしなところもあるが、これまたかなりな一般化だ。

英語の例

a) <エンジンがかからない>は英語では <The engine does not work.> だ。

b) to apply cream

これは<軟膏(cream)を塗る> こと。目に見えるのは<塗る>ことだが、目的は皮膚の不具合を治すことだ。治るまでには時間がかかる

to apply (force, etc) to get work, function; to make something work

---
手をかける。手がかかる。
手数をかける。手数がかかる。
手間をかける。手間がかかる。
時間をかける。 時間がかかる。
てまひまをかける。 てまひがかかる。
金をかける。金がかかる。

以上は<掛ける>、<懸ける>と関係なさそうだが、やはり何らかの成果、効果を得るために時間や手間を使うことだ。<無駄に時間をかける>、<かけた手間が無駄になる>ことはあるが、目的があってこその表現だ。上記のやや長い説明参照。

to use (time, effort) to get something

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水をかける。 水がかかる。雨がかかる。
粉を(ふり)かける。
布団をかける。
カバーをかける。
汁をかける。 かけそば。
 税金をかける。税金がかかる。(こういう見方もある)
(人に)魔法をかける。 魔法がかかる。(こういう見方もある)。

迷惑をかける。迷惑がかかる。
疑いをかける。疑いがかかる。 

ほこりがかかる。

上記の<かかる>の場合は受身(被害)だ。 

以上の例はこれまた<掛ける>、<懸ける>と関係なさそうだ。むしろ、to cover (おおう、覆う)とか<かぶせる>いった感じだ。しかし、上記の悪事や病気からの連想ができないか。

<かけて(掛けて、懸けて)>、通常な、正常な動き、状態を止める。-- >状態を変える。-- >効果を得る。
<かけ(掛け、懸け)>られて通常な、正常な動き、状態をがとまる。-- >状態がかわる。-- >効果を得られる。

いい効果と悪い効果がある。

また、見方を少しかえると、<何かの目標の向かって、何かの効果を期待して、何かをする>。これまたいい効果と悪い効果がある。この場合、大げさになるが to cover (おおう、覆う)というよりは、<空間>を越えて、<空間>を通して何かをして効果を得ることだ。

---
この事件の解決はあなたにかかっている。

<xxによる>とは<xxによりかかって>いることだ。 to depend on, to rely on

--- 
あなたはこの事件に(と)かかわっている。

関わる、関連するとは何かに<引っかかって>いることだ。 to related with

---
掛け算

英語は multiplication。動詞は<to multiply>。日本では<九九>があり、あまり考えずに計算してしまうが、わりと複雑な計算だ。 この <to multi-ply> に <to ap-ply> の <-ply> があり、ある意味では同根。

興味と時間のある人は下記参照

http://spttejd.blogspot.hk/2012/11/elementary-algebra-in-japanese.html

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かけるの複合動詞

複合動詞を調べてみる。

a) xxかける 

ただし<行きかける>、<言いかける>、<やりかける>の<かける>などの<xxし始める>、もっと正確には<xxし始めようとする>(まだ始まっていない、行きかける)と<xxし始めて、現在進行中>(もう始まっている、やりかける->やりかけの)の意の<xxかける>は除く。

浴びせかける
うなずきかける
押しかける
切りかける
仕かける    関連語: 仕掛け  (ワナを)仕掛ける。 
突きかける
詰めかける
取りかける   関連語:取っ掛かり
投げかける
働きかける
走りかける  <走り><駆ける>ではない 。<走り寄る>に近いが<走り掛ける>はスピードがあるようだ。
話しかける  <言いかける>は普通<言い始める>の意。
吹きかける
振りかける   関連語: ふりかけ
ほほえみかける
見かける
笑いかける 

以上は<引っ掛ける>感じの強いもの(取りかける、見かける)や、<近づく、寄せる>の感じの強いもの(押しかける、切りかける 、突きかける、走りかける )もあるが、総じて、対象に何らかの影響を与える、さらには影響を与えて、さらに何かの効果を得ようとする動き、動作、しぐさだ。
少し前に、<このばあい、大げさになるが to cover (おおう、覆う)というよりは、<空間>を越えて, 通して何かをすて効果を得ることだ。>と述べたが、これと関連する。一昔前の<エーテルを通して力、声、電気、電波>が伝わるような表現が多い。うなずきかける、投げかける、働きかける、話しかける、吹きかける、笑いかけ。特に、<働きかける>はその代表だ。

立てかける
もたせかける

以上は<かけて>安定させるような意味だ。

b) xxかかる

襲いかかる
切りかかる
のしかかる。
飛び(跳び)かかる

降りかかる

以上は<かかる>は対象に急いで、<近づく、寄せる>動き、動作、しぐさだ。

もたれかかる
寄りかかる

以上は<かかって>安定させるような意味だ。

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3)駆ける

 <駆ける>は<走る>で大体(おおむね)代替できるが、<駆ける>の語源は<掛ける>、<引っ掛ける>だ。足を地面に<引っ掛け>て前に進むのだ。車も同じ。タイヤが地面を<引っ掛け>て前に進む。英語で<トラクション>と言うがトラクターの<トラク>、すなわち<牽く、引く>だ。

小さなボートは櫂(かい)で水を<引っ掛け>て前に進む。アヒルは<水かき>で水を<引っ掛け>て前に進む。近代の大きな船はスクリュウで進む。

鳥は空気を<引っ掛け>て前に進むので<空を翔(かけ)る>のだ。ジェット機以前の飛行機はプロペラで空気を<引っ掛け>て前に進む。

いずれの場合にも、 何かに<引っ掛け>て引くことによって生じる力を利用して前に進むのだ。推(お)して進む推進力というよりは引進力、<引っ掛け>進力だ。

<引っ掛ける>は<掻く>と深い関係がある。 5)<掻く>で述べる。

---
4)賭ける

金を< 賭ける>場合、その目的は金を増やすことだ。これは<てこの原理>と同じで、労せずして大きな力を得ることと大差はない。<てこの原理>は物理法則で間違いなくはたらくが、金を< 賭ける>場合は原則として<てこの原理>は働かない。物理法則ではないのだ。
命を< 賭ける>場合、その目的は何かを、特に大きな、または困難なことを成し遂げることだ。効果を得るため、または効用を引き出すために何かすることには<かける>のひとつの用法。力(鍵、エンジン、電話、etc )をかける。

5)掻く

<掻く>という運動、動作、しぐさ。英語は to scratch が一部相当するが、大和言葉の動詞<かく>は上の<駆ける>で述べたが、極めて重要な働きがある。

<掻く>はふつう

かゆいところを掻く
あたまを掻く
鼻(鼻の頭)を掻く。

雪を掻く。 雪かき。 屋根に掛かった雪を掻き下ろす。
水を掻く。 水かき。

のようにつかわれるが、<掻く>に関連した複合動詞を見てみよう。

かき上げる (髪)  
かき揚げる (てんぷら)
かき集める (落ち葉、ごみ)
かき入れ時
かき切る --> かっ切る (口語) (のどをかっ切る)
かき曇(くも)る
かき消す
かき込む (ご飯)
かきさらう --> かっさらう (口語)
かき捨てる (ごみ、恥)
かき出す (雪、かまどの中の灰、耳垢)
かき立てる (意欲をかき立てる)
かきのける (ひと)
まきはらう --> かっぱらう (口語)
かき混ぜる
かき回す   かきたまご -scratched eggs ではなく scrambled eggs
かき乱す
かきむしる (髪)
かき寄せる ((落ち葉、ごみ)
かき分ける (人ごみ)
一回の<掻く>動作、2-3回の<掻く>動作、速く連続した<掻く>動作がある。

その他では次のような表現がある。

いびきをかく。
汗をかく。
恥をかく。
べそをかく。
欲をかく。 (欠くではない)

以上はすばやい運動、動作、しぐさではなく、直接<掻く>とは関係なさそう。別途検討。

さらには、

敵の裏をかく ?
あぐらをかく ?
嘘(うそ)をかく。 普通は<嘘をつく>、嘘つき、<嘘を言う>か。?

--- 
6)書く

<掻く>との関係ははじめの方に書いた。


2.<かける>イントネーションがとくにないもの。(東京アクセント)

<欠ける>は<ない>、<たりない>(不十分)、一部がこわれてない(ガラスがかける)の意だ。xx に欠ける。xx が欠けるの用に使う。自動詞。他動詞は<欠く>だ。 1.の<かける>、<かく>とは根本的に違うような気がする。

<かくす>、<かくれる>は同源だろう。



sptt


Sunday, November 11, 2012

<ひく>、<つく>、<おす>について

前回のポスト<つく>について述べた。また簡単に<ひく>を<つく>の反対語の一つとしてとりあげた。

まず、 <つく>についてもう少し分析してみる。

突く
着く
付く 、 関連語:付ける
就く
衝く (的を絞って突く、攻撃する)
尽 く 、関連語:尽きる、尽くす
憑く (もののけが(とり)つく)
搗く (こめ、もちなどをつく)
点く (火がつく、電気がつく)
まりをつく
杖をつく、手をつく
息をつく

1.発音上<つ>と<く>がある。 下線部にストレスとかアクセントとかイントネションがある(東京語)。

1)<つ>グループ: 突く、衝く
2)<く>グループ: 着く、就く、尽 く、搗く、点く、 まりをつく、 杖をつく、手をつく、息をつく

<つ>グループの<突く>と<衝く>は規模は違うが、ほぼ同じような意味だ。
く>グループはやや複雑で、以下に分析をこころみる。

2.外国語の調査

中国語は端折って上記の漢字表現に準ずるとする。

 <つ>グループの英語

突く の英語:to hit (with a tool having a point at the end like a stick)。

<to hit>は<打つ>だが、<打つ>にもいろいろある。

to hit: <打つ>;だが、打つ先(打突部)の方向は大体水平方向、<ひく>の反対。打つ先(打突部)を上から下に下ろすと<うつ>とか<たたく>になる。<打つ>回数は1回か多くても2-3回。それ以上になるとto beat になるようだ。繰り返しえて<突く>ばあいは、<ひく>必要がある。<突く>を続けると<つつく>になる。<ひく>を続けても<ひひく>にはならない。

to beat、to knock: 続けて<打つ>。<たたく> は2-3回以上<打つ>。太鼓をたたく。戸をたたく。

<つ、突く>に似た語に<押す>がある。<押す>の英語は<to push, to press>。 to push は大体前方水平方向に押す、 to press は大体下方垂直方向に押す。これらの方向はかならずしも正確ではないが、<押す><to push, to press>が断続、継続した動作であるのに対して、<つ、突く>は1回か多くても2-3回の動作だ。<押す>はもう一段一般化した動詞とも言えよう。

衝く の英語:to attack。 <衝く>は規模が大きいが、<突く>とほぼ同じような意味だ。

2)<く>グループの英語

着く の英語:to arrive (自動詞)、 to reach (他動詞)
付く  の英語:to adhere (to),  to stick to (自動詞); 付ける: to attach (他動詞)
就く の英語:to take (a post, a seat) (他動詞)
尽 く の英語:  to use up (他動詞), to reach the end, to end (他動詞、自動詞)
憑く  の英語: to attach   (付ける)(他動詞),  to adhere to (自動詞)
搗く の英語:to pound (dough) (他動詞)
点く の英語: to turn on (light) (他動詞、自動詞)
まりをつく の英語:to bounce a ball (他動詞)
杖をつく の英語: to stick a stick。<to stick>はステッカーの<to stick>(他動詞)、<a stick>はステッキ。
手をつく の英語: これはむずかしい。to use a hand (or hands) to support your body to avoid damage とでもなろうか。
息をつく の英語: to take a breath、to make breathing

このグループの<く>を分けると、

a) 着く, 尽 く -  ある特定のところに近づいていく(くる)。to reach the end

b) 付く, 就く、憑く -  ある特定のところ、ものに<つく>。to stick to (自動詞)、to attach (他動詞)
英語の to attach と to attack は同じ語源だろう。

c) 搗く, まりをつく、杖をつく、手をつく  -  1)<つ>グループ: 突く、衝く の動きに近い。<手をつく>以外は<つく>の繰り返しが予想される。

d) 点く  -  明かりが点(つ)くは電灯が普及してからの比較的新しい言い方ではないだろうか。かがり火やガス灯は<点(つ)く>というよりは<ともる>だ。電灯に限らず電気機器はスイッチを入れるとすぐにつく。一昔まえまではラジオ、テレビ、洗濯機、冷蔵庫はなく電灯が唯一の電気機器だった。それでもスイッチのON状態はコネクトされた状態だ。言い換えると、付く、放(はな)れるの<付く>だ。スイッチのON)(付く、OFF(放れる)からの連想ではないだろうか。

f) 息をつく  -  <息をつく>は<一息つく>とともに慣用語になってしまっている。これと似て非なる表現<息をいれる>、<一息入れる>がある。<一息入れる>はしばらく働き続けたあとで<休み>を入れるといったような使われ方。<一息つく>はこれに似ているが、なにか困難なことが続いたあとで少し楽(らく)になるとといったような使われ方だ。言い換えると、呼吸困難な状態から呼吸ができる状態になることだ。したがって、<息をつく>、<一息つく>は<息をする>は<一息する>で、<つく>は極めて一般化した動詞<する>で置き換えられる。<呼吸>動作をよく観察すると、息を<吸う>、<吐く>の繰り返しだ。まりを<つく>動作に似ている。 と言える。 

g) 手をつく
 <手をつく>動作は<突く>よううな動作だ。 <手をつく>目的は、人が倒れようとするときに身を守るためで、瞬間的な動作だが、地面や床に、腕部分を<突っ張って>手の部分(片手でも両手でもよい)を地面や床に<付ける>ことだ。したがって正確には腕の働きがある。<突く>と<付ける>が合わさったような動作だが、<突く>と<付ける>ももとは同根、すなわち<つく>だ。 なお、カルタ取りの<お手つき>の<つき>も手を<突いて>、カルタに<付ける>動作と言える。


3.<ひく>、<つく>、<おす>の調査

<突く>の反対語の代表は<引く>。<着く><付く>の反対語の代表は<離れる>となるだろう。<つく>に比べると反対語がやたら多い。 (前回のポスト参照

ここでは<ひく>につて調べてみる。<ひく>は<つく>の反対語だが共通点がある。1)ともにかなり一般的な語、言い換えれば多義語であろ。2)<ひく>は後ろに他の動詞をひき従え、<つく>も後ろに他の動詞をつき従える。後ろにくる動詞はかなりあり、<ひく>にも<つく>にも従う動詞はかなりある。さらに<おす>を加えてみる。 <おす>はそれほどの多義語ではないが(押す、推す=これもほぼ<押す>の意)後ろにかなりな動詞を従える。

調査結果

A.  ひく

ワープロ辞書の漢字: 引く、牽く、轢く、弾く、挽く、曳く、惹く、退く

漢字の多さにだまされてはいけない。 あくまで大和言葉の<ひく>が基本。 <ひく>の物理的な動き、動作は大きく分けると二つになる。

1)基点(動作主(ぬし)がいる場所> <------ 対象物

基点は固定しているのが一般的だが矢印方向に動いてもよい。なんらかの方法で<ひく>と対象物は動作主に近づいてくる(いく)。動作主も動く場合は2)の場合になるのでここでは除外。

漢字では<引く>、<惹く>が相当。英語は<to pull>, <to attract>になる。

 2) 対象物 ------>動作主(ぬし)がいる場所

動作主(ぬし)は矢印方向に動く。 なんらかの方法で<ひく>と対象物は動作主に<つられて>ついてくる(いく)。この場合。<ひく>道具が<張って>いないと具合がわるい。したがって<引き張る> --> <引っ張る>ことになる。

漢字では<引く>、<牽く>、<曳く>が相当。英語は<to tract (tractor)>, <to tag (tag boat)>になる。

<引く>は汎用性があり漢字を用いない<ひく>に近い。 はやくいえば、1)も2)も見方を広げれば同じことだ。

ところが、話はそう簡単ではない。

3)線を引く

<線を引く>は<to pull>, <to attract>の<ひく>でも<to tract>, <to tag>の<ひく>でもない。
英語は<to draw a line>だ。Drawing は線によるスケッチだ。

線を描(えが)く、特に直線を描く場合、中国の書道(書法)や山水画の画法では筆を前方に押しながら描く特殊方法があるが(それなりに特殊効果があるようだ)、普通は手前に<引い>て描く。

線を<かく、書く、描く>という言い方もあるが、この<書く>は曲者で、漢字で<書く>と書くとなにか文明を感じさせるが、もとはといえば<引っかく>の<掻(か)く>で、<引き><掻く>だ。<書く>と<掻く>は同源だろう。したがって、字を<書く>のも基本的な動作は<引く>だ。大昔は<引っ掻いて>線や、絵や、字を<かい>たのだ。

なお、<糸を引く>という言い方がある。<線を引く>ような感じだ。納豆が<糸を引く>。蜘蛛(クモ)も<糸を引く>ようなことをする。よくわからないが、<糸を吐く>とも言えそうだ。繭(マユ)もも<糸を引く>ようなことをするが、これは何と言うのか。

粘性のある物質はある部分<引く>と糸状になるが、これは一次元での動作。英語では to lengthen とか to stretch 。<引いて伸ばす>ので<引き伸ばす>だ。写真の<引き伸ばし>は二次元の動作。英語で to enlarge だ。

4)ギターを弾(ひ)く

大和言葉なので<琴を弾く>にする。 <琴を爪弾く(つまびく)>は雅語か。細かく観察すると、<琴を弾く>は<弦(げん)>を弾(はじ)くことだ。弦は前方向に<推しはじい>ても音はでるが、通常は弦を手前方向に<ひきはじく>。<ひきはじく>の<ひく>は<弾く>ではなく<引く>でもいい。<でもいい>というよりは<引く>だ。<はじく>が加わっているが、<引く>動作に変わりはない。
<爪弾く(つまびく)> はもっともらしいが?マークで、爪や爪代わりの<ばち>を使うが、動詞の<摘む(つむ)>が正当ではないか。<摘む(つむ)>の英語は to pluck。 ただし英語では<to play guitar>だ。 多分<to pluck the cords of a guitar>とは言えるだろう。だが<ピアノを弾く>はどう考えても<引く>というよりは<たたく>だ。太鼓、トラムは<たたく>だ。もっともピアノと太鼓ではたたき方違う。<弾く>は英語の<to play 楽器>の to play 苦しまぐれの訳語か。

5)退(ひ)く

漢字<退く>は当て字で、<退く>は<しりぞく>で<後ろ方向に下がる>ことだ。これは1)の変形と見なせる。

1)基点(動作主(ぬし)がいる場所> <------ 対象物

対象物が固定し、<引く>道具は特になく、動作主が対象物から離れるように動けば<退く>(ひく、しりぞく)になる。英語は<to draw>と関連のある<to withdraw>だ。

6)引き越す --> 引っ越す、体言<引越し>

<引越し>と<引く>はあまり関係なさそうに見える。動き、動作は移動(変位)を伴う。<越す>はあるモノを越えて<いく>ので、<引く>というよりは<押す>だが、いろいろなものを<引き連れて>移動すると見れば、<引っ越す>ということになる、<引く>の原義が生きている。

7)豆を挽(ひ)く

実際の動作、作業は道具を動かしながら<押しつぶす>感じだ。英語は to grind。<動き>は前に押しても、手前に引いても、回してもいい。日本のノコギリと西洋のノコギリは歯の向きと使い方が違うのと同じで、日本では主に<引いて>豆を粉にしたのだろう。

8)轢(ひ)く

車に轢(ひ)かれる<轢く>だが(漢字はていねいに車の字が左についている。何かが車に<ひかれる>と2次元的に押しつぶされるのだが、結果としては写真の<引き伸ばし>のようになる

9)率いる

<率(ひき)いる>と漢字を使うが、大和言葉では<引きいる>でいい。 先頭に立って後ろの人々<引っぱって行く>感じだ。<いる>は<入(い)る>の用法の一つで、<おそれ入る><寝入る>、<恥じ入る>などで使われ ている<しっかり、すっかりxxする>の意だろう。


B.  おす

ワープロ辞書の漢字: 押す、推す。 <推す>はほぼ<押す>の意。 <ひく>、<つく>にくらべると、純物理的な動き、動作を示すことが多く、比喩的、<慣用>的な使い方は少ない。下記の調査結果内容参照。


調査結果内容

引き上げる (慣用もあり)
突き上げる (慣用もあり)
付け上がる (慣用のみ) <突く>ではないだろう。
押し上がる
押し上げる

引き合う (慣用もあり)
突きあう 
付き合う (慣用)
押し合う

引き合わせる  (慣用もあり)
突き合わせる (慣用もあり)

ひきいる 普通<率いる>がつかわれるが、語源は<ひき><いる>だろう。(慣用のみ)
引き入れる (慣用もあり)
突き入る
付け入る (慣用のみ)
押し入る (ほとんど慣用)
押し入れる  体言<押入れ>

引き移す
ひき移る
引き写す  <引き写す>はほとんど聞かないが<引き写し>は聞く。

突きうごかす  (慣用もあり)
押し動かす

引き受ける <ひく>は<手前に>の方向、<突く>は<前>の方向への動きなので、<突き受ける>は矛盾になる。

押し売る 体言 <押し売り>  (慣用のみ)

引き起こす (ほとんど慣用)
突き起こす
押し起こす

突き押す  <ひく>は<手前に>の方向への動きなので、<引き押す>は矛盾になる。

引き落とす (慣用もあり)
突き落とす (慣用もあり)
押し落とす
------

引き返す
突き返す (ほとんど慣用)
押し返す

引きかえる 引き換える (慣用のみ)、引き帰る
引き代わる (ほとんど慣用)

引き隠れる (慣用)

引きかかる --> 引っかかる (慣用もあり)
突きかかる --> 突っかかる (慣用もあり)

引きかける --> 引っかける
突きかける --> 突っかける
押しかける  (慣用)

引き切る  慣用もあり ひっきりなし 突き切る  慣用もあり 突っきる
押し切る  (ほとんど慣用)

引き崩(くず)す
突き崩す
押し崩す

引き消す  ほとんど聞かないが間違いではない。
突き消す  同上
押し消す  

引き越す --> 引っ越す (慣用のみ)

弾きこなす  引くではない

引き込む
引き込める -->ひっこめる (慣用)
引きこもる (慣用のみ)
突き込む -->突っ込む
押し込む
押し込める 

引き壊(こわ)す  あまり聞かないが間違いではない。
突き壊す       同上
押し壊す       同上

------
引き裂(さ)
突き裂く

引き下がる  (慣用あり)
引き下げる
押し下げる

突き刺(さ)す

引き締まる (ほとんど慣用)
引き締める (ほとんど慣用)

引き従(したが)える <ひく>は<牽く>の意に近い。
付き従える (慣用)  <突く>ではない。

引き絞(しぼ)る

引きすがる

突き進む(める) <進む>は<手前に>の方向への動きなので、<引き進む>は矛盾になる。
押し進む(める)

引きずる

付き添う

------
引き倒す
突き倒す
押し倒す

引き出す (慣用が多い)
突き出す
突き出る
押し出す 

引き立てる (慣用)
突き立てる
押し立てる

押し黙る (慣用)

押し縮(ちぢ)める

引きつく  体言<ひきつけ>(をおこす)。 (慣用)
引きつける  体言<ひきつけ>(が強い、相撲用語)。
突きつける
押し付ける  (慣用が多い)

引き継(つ)ぐ (慣用)

引き続ける
引き続く  (慣用)
突き続ける
押し続ける

引きつなぐ

引きつぶす
つきつぶす  <突きつぶす>とも<搗きつぶす>ともなる。
押しつぶす

突き詰める (慣用あり)
押し詰める
押し詰まる  (慣用)

引き連(つら)ねる
付き連ねる  <突き>ではない

引き連れる

突き通す(る) 新慣用候補 Breake Thru 
押し通す(る) (慣用)
 
引きとどめる (ほぼ慣用) <引き止める>が普通。
押しとどめる

突きとばす

引き取る (ほぼ慣用)  (息を)引き取る
押し取る

------
引き直す  (線を)ひき直す

押し流す (慣用あり)

押しなべる 慣用<押しなべて>。 <なぶ>、<なぶる>、<なべる>?

引き抜く  (慣用あり)
突き抜く  新慣用候補 Breake Thru 
押し抜く

ひき逃げる  轢(ひ)き逃げる

引きのける  ほとんど聞かない
突きのける
押しのける (慣用あり)

引き伸ばす
押し伸ばす

------
おしはかる   推しはかる  <推し>は<推す>だが語源は同じ<押す>の<おす>。

引き剥(は)ぐ
引き剥がす

引き外(はず)す   ほとんど聞かない
突き外す       ほとんど聞かない

尽き果てる   <突く>ではない。

引き離す (慣用もあり)
突き離す (慣用もあり)
押し離す  ほとんど聞かないが、動きとしては可能

引き放つ  (弓を)引き放つ

引き払う
突き払う

引き張る --> 引っ張る
突き張る <手をつく>の<つく>--> 突っ張る

押し広げる
押し広める

------
引き曲げる --> ひん曲げる (音便)
押し曲げる

引き混ぜる  ほとんど聞かない
つき混ぜる  ほとんど聞かない。<突きつぶす>とも<搗きつぶす>ともなるだろう。

付きまとう  <突く>ではない

引きまとめる

引き回(まわ)す   (慣用もあり)
突き回す
押し回す

引きむしる

引き戻(もど)す  <戻す>は<手前に>の方向への動きなので、<突き戻す>は矛盾になる。
引き戻る
押し戻す

-----
引き破(やぶ)る突き破る  新慣用候補 Breake Thru 

引き寄せる  
押し寄せる  

------
引き分ける (ほぼ慣用)
突き分ける
押し分ける 

引き渡す (ほぼ慣用)


上記の例でも<引く>の複合動詞は慣用的な意味が多いが、さらに

引っ掛ける (関東方言か)
引っ込む、込める (関東方言か)
ひっ裂(さ)く (関東方言か) - <引き裂く>の意
引っつかむ (関東方言か)
引っ付ける  (関東方言か) - <引き付ける>の意ではなく<付ける>の意だ。
ひっ捕らえる (関東方言か)
引っぱがす (関東方言か) - <引き剥(は)がす>の意

といった言い方が日常よく使われる。


-----


参照

<引く>はドイツ語でziehen。英語の to pull より意味範囲が広いようだ。to pull 以外に to draw、自動詞では to move  (引っ越す)、reflexive動詞 では to extend, to stretch(引き伸ばす)などがある。

 ziehen- (collin's online) German-English Dictionary



ziehen  

zie•hen     ( zog)   pret   ( gezogen)   ptp  
In Verbindungen mit Substantiv siehe auch Eintrag für das jeweilige Substantiv.     
1       transitives verb  
a      (allgemein)    to pull  
[Handbremse]   to put on  
[Choke, Starter]   to pull out  
[Hut]   to raise  
etw durch etw ziehen      to pull sth through sth  
jdn nach unten ziehen      to pull or > drag sb down     (fig)  
der Hund zog die Tischdecke vom Tisch      the dog pulled the cloth off the table  
den Ring vom Finger ziehen      to pull one's ring off (one's finger)  
die Mütze tiefer ins Gesicht ziehen      to pull one's hat further down over one's face  
den Mantel fest um sich ziehen      to pull one's coat tight around one  
den Mantel übers Kleid ziehen      (=anziehen)   to put one's coat on over one's dress  
die Vorhänge vors Fenster ziehen      to pull or draw the curtains  
die Schultern in die Höhe ziehen      to raise one's shoulders  
er zog die Knie bis unters Kinn hoch      he drew his knees up toward(s) his chin  
das Flugzeug nach oben/unten ziehen      to put the plane into a climb/descent  
die Stirn kraus or in Falten ziehen      to knit one's brow  
(neue) Saiten auf ein Instrument ziehen      to (re)string an instrument  
b    (=hinziehen)     (fig)  
was zieht dich denn nach Hause?      what is drawing you home?  
meine Liebe zu den Bergen hat mich in die Schweiz gezogen      my love of the mountains drew me to Switzerland  
es zog ihn in die weite Welt      he felt drawn toward(s) the big wide world  
etw ins Komische ziehen      to ridicule sth  
musst du immer alles ins Lächerliche ziehen?      must you always make fun of everything?  
unangenehme Folgen nach sich ziehen      to have unpleasant consequences  
die Aufmerksamkeit or die Blicke auf sich ($) ziehen      acc   to attract attention  
jds Hass auf sich ($) ziehen      acc   to incur sb's hatred  
jdn ins Gespräch or in die Unterhaltung ziehen      to bring sb into the conversation  
c    (=herausziehen)   to pull out (aus of)  
[Zahn]   to take out, to extract  
[Fäden]   to take out, to remove  
[Korken, Schwert, Revolver]   to draw, to pull out  
[Wasserproben]   to take,   (Math)   [Wurzel]   to work out  
[Los, Spielkarte, Schlussfolgerungen]   to draw  
[Vergleich]   to draw, to make  
Wein auf Flaschen ziehen      to bottle wine  
die Pflanze zieht ihre Nahrung aus dem Boden      the plant takes its nourishment from the soil  
Zigaretten/Kaugummi (aus dem Automaten) ziehen      to get cigarettes/chewing gum from the machine  
d    (=zeichnen)   [Kreis, Linie]   to draw
e    (=verlegen, anlegen)   [Kabel, Leitung etc]   to lay  
[Graben, Furchen]   to dig  
[Mauer]   to build  
[Zaun]   to put up  
[Grenze]   to draw  
Perlen auf eine Schnur ziehen      to thread pearls  
f    (=herstellen)   [Draht, Kerzen, Kopien]   to make  
Kopien von etw ziehen      to copy sth, to make a copy of sth  
Computerprogramme schwarz ziehen      to pirate computer programs  
    gezogen  
g    (=züchten)   [Blumen]   to grow  
[Tiere]   to breed  
sie haben die Kinder gut gezogen      inf   they brought the children up well  
2       intransitives verb  
a    (=zerren)   to pull  
an etw ($) ziehen      dat   to pull (on or at) sth  
ein ziehender Schmerz      an ache  
b    (=umziehen)   aux sein   to move  
nach Bayern/München ziehen      to move to Bavaria/Munich  
zu jdm ziehen      to move in with sb  
c    (=sich bewegen)   aux sein   to move, to go  
[Soldaten, Volksmassen]  
to march  
(=durchstreifen)  
to wander, to roam  
[Wolken, Rauch]  
to drift  
[Gewitter]  
to move  
[Vögel]  
to fly  ,   (während des Vogelzugs)    to migrate

durch die Welt ziehen      to roam the world  
durch die Stadt ziehen      to wander about the town  
in den Krieg/die Schlacht ziehen      to go to war/battle  
heimwärts ziehen      to make one's way home  
lass mich ziehen      old, liter   let me go  
die Jahre zogen ins Land      liter   the years passed  
d    (=eindringen)   aux sein   to penetrate (in etw (    acc  ) sth)  
[Rauch, Nebel]  
to drift (in etw (    acc  ) into sth)
e    (=rücken)     (mit Spielfigur)    to move  
(=abheben)  
to draw  

mit dem Turm ziehen      to move the rook  
wer zieht?      whose move is it?  
f    (=Zug haben)  
[Feuer, Ofen, Pfeife]  
to draw  

an der Pfeife/Zigarette ziehen      to take a drag on one's pipe/cigarette  
g    (=Eindruck machen)   inf   so was zieht beim Publikum/bei mir nicht      the public/I don't like that sort of thing  
der Film zieht immer noch      the film is still popular  
so was zieht immer      that sort of thing always goes down well  
h    (=sieden)  
[Tee]  
to draw  ,   (in Kochwasser)    to simmer,   (in Marinade)    to marinade
3       unpersÖnliches verb  
es zieht   there's a draught   (Brit)  or draft   (US)     
wenn es dir zieht      if you're in a draught   (Brit)  or draft   (US)     
mir ziehts im Nacken      there is or I can feel a draught   (Brit)  or draft   (US)   round my neck  
in diesem Haus zieht es aus allen Ritzen      there are draughts   (Brit)  or drafts   (US)   everywhere in this house  
mir ziehts im Rücken      (=tut der Rücken weh)   my back hurts  
4       reflexives verb  
sich ziehen  
a    (=sich erstrecken)   to extend  
das Industriegebiet zieht sich bis weit in die Tiefebene (hinein)      the industrial area extends far across the plain  
dieses Treffen zieht sich!      this meeting is dragging on!  
sich zickzackförmig durchs Land ziehen      to zigzag through the countryside  
sich in Schlingen/Serpentinen durch etw ziehen      to twist or wind its way through sth  
dieses Thema zieht sich durch das ganze Buch      this theme runs throughout the whole book  
b    (=sich dehnen)   to stretch  
[Klebstoff]  
to be tacky  
[Käse]  
to form strings  
[Holz]  
to warp  
[Metall]  
to bend
c    (=sich befreien)  
sich an etw ($) aus dem Schlamm/in die Höhe ziehen      dat   to pull oneself out of the mud/up on sth  
    Affäre  
    Patsche