Friday, November 28, 2014

ドイツ語では<xx(誰々)から>の意が3格になる ab-動詞

前回のポスト<to rob xx of yy>で次のように書いた。


日本語でも3格はふつう<xx に>で<xx から>ではない。ドイツ語動詞を調べてみればわかるが、英語の3格は普通<me、him、her、us、them>か<to me、him、her、us、them、代名詞以外の人>、日本語ではふつう<xx (だれだれ)に>だがドイツ語では<xx(だれだれ)から>の意が3格になる動詞は結構あり、意味上の法則性がありそう。 別途検討予定。

 

 忘れないうちに別途検討しておく。

日本語の<だれだれ(誰々)>は不定代名詞。ドイツ語では jemand が代表のようで、次のように格変化する。

1格  jemand
2格     jemand(e)s
3格     jemandem    略語は<jm>
4格     jemanden

すべて違うので、正しいドイツ語であれば何格かを判定するのに間違えることはない。ドイツ語の ab- 前綴りの動詞を調べてみると、<jm et ab-xxen>という文型がやたら出てくる。これは基本的には英語の<to rob xx of yy>とにて(同じではない)、<jm>が<xx(誰々から)>が<et (etwas)>が<of yy(何々を)>だがet (etwas)>は2格ではなく4格。

Collins German-English Reverso

to rob
      vt   [person]   bestehlen  ,   (more seriously)    berauben
[shop, bank]   ausrauben  
[orchard]   plündern  
to rob sb of sth        (lit, fig)   jdn einer Sache (gen) berauben geh  , jdm etw rauben     (lit also)   jdm etw stehlen   


belauben の場合は英語の<to rob xx of yy>に似てjdn einer Sache (gen)>モノは2格だが人は jn (jemanden)と4格になっている。

rauben、stehlen (to steal) の場合は上で述べた<jm et ab-xxen>の形だ。日本語で<xx から>奪う(強奪する、奪い取る、無理やり取る)、盗む以外に、基本的には<取る>の意味だが、

jm et abbetteln     xx から yy を施(ほどこ)してもらう(施しを受ける)
jm et abdringen    xx から yy をゆすり取る
jm et abdrohen     xx から yy をおどし取る
jm et aberobern    征服して xx から yy を取る(かすめ取る)
jm et abhelfen       助けて xx から yy を取る(取ってやる、脱がせる)
jm et ableihen
jm et ablocken     xx から yy をだまし取る(たぶらかして取る)(*)
jm et ablügen       xx から yy をうそをついてだまし取る
jm et abnehmen    to take sth from sb, to relieve sb of sth

といろいろな<取る>がある。

(*)だます

日本語は結構豊富で<だます>以外に

たぶらかす (<たぶる>という動詞があったのだろう)
ごまかす (<誤魔化す>は当て字だろうが、<誤魔>はおもしろい組み合わせだ。<だます>の関連、連想語か)
惑(まど)わす
かどわす(かどわかす)
まぎらす(まぎらわす)
まるめこむ
ばかす(化かす) - ばか(馬鹿)と関連があろう。

だま(dama)、ごま(goma)、まど(mado)、かど(kado)、まぎ(magi)はなんとなく語呂が似ている。

辞書によると<だます>の古語に<おびく>というのがあり、現在<おびく>自体は使われないが

おびき寄せる
おびき出す

は使う。


sptt

Sunday, November 23, 2014

英語の助動詞と日本語の助動詞 (日本語の助動詞-2)


かなり前、sptt Notes on Grammar の書き始めのころ<日本語の助動詞>のタイトルで日本語の助動詞について概論みたいなのを書いた。読み返してみたが、書き換えの必要はないようだ。助動詞の定義、特に日本語の助動詞については英語の助動詞とは単純に比較出来ないし、日本語の助動詞は問題はあるが、書き換えるのは混乱をさらに混乱させることになりそう。ここでは英語の助動詞を検討してみる。だが、日本語との比較になる。


1.英語の助動詞の定義と意味

英語などではモーダル(modal)(助)動詞とも呼ばれるように義務、可能,許可、意志、蓋然性、願望,などを表す。助動詞の特徴は意味以外に一般動詞の原形に直接つく(一般動詞の前につく)という大法則がある。must は一般動詞の原形に直接つくので助動詞だが need は <need to + 一般動詞の原形>になるので助動詞ではなく、やや特殊だが一般動詞なのだ。以下は<日本語の助動詞>のコピー。



英語の個々の助動詞の意味

義務 - 英語 should, must + 動詞(原型)
日本語 ねばばならない、なければならない(二重否定,助動詞ではない)、泳がねばならない、
日本語 べきだ、 (例)泳ぐべきだ。
<動詞連体形+義務(名詞)、必要(名詞)がある>もよく用いられる。

可能 - 英語 can + 動詞(原型)
日本語 動詞連用形+(が)できる,泳ぎができる 
日本語   動詞連体形+こと+できる、(例)泳ぐことができる
日本語 れる,られる (可能)  泳がれる ---> 泳げる

許可 - 英語 may + 動詞(原型)
日本語 てもよい(助動詞ではない)、 (例)泳いでもよい  ---> 泳いではいけない (禁止)
 
意志 - 英語 will + 動詞
日本語 動詞終止形、 (例)わたしは(どうしても)泳ぐ; 動詞連用形 + ます

蓋然性 - 英語 may, might, would, could
日本語 推量の助動詞、だろう、らしい、ようだ、まい、そうだ(伝聞)、助動詞ではないが <かもしれない>。

 ”

以上のうち日本語で日本語の助動詞で対応するのは最初の

義務 - 英語 should, must + 動詞(原型) 
日本語 べきだ、 (例)泳ぐべきだ。



最後の

英語 may, might, would, could
推量の助動詞、だろう、らしい、ようだ、まい、そうだ(伝聞)

ただしこれらも

義務 - 英語 should, must + 動詞(原型)
日本語: 助動詞でない<ねばばならない>、<なければならない>(二重否定,助動詞ではない)、泳がねばならない
動詞連体形+義務(名詞)、必要(名詞)がある

英語 may, might, would, could
日本語: 助動詞でない<かもしれない> - 仮定疑問みたいな<かも>の否定

がよく使われるようだ。

ということはほとんどまったく英語の助動詞=日本語の助動詞ではないということだ。

前回書き忘れたが

英語 should、must は義務以外に<xx はずだ>、should、must +have + 動詞の過去分詞(xxxx-ed )で<xx たはずだ>の意味があり、これも<xx はずだ>、<xx たはずだ>は日本語では助動詞ではない。<はず>はおもしろい助動詞まがいの名詞で別途検討予定。

特に可能の can は

可能 - 英語 can + 動詞(原型)
日本語 動詞連用形+(が)できる,泳ぎができる 
日本語   動詞連体形+こと+できる、(例)泳ぐことができる
日本語 れる,られる (可能)  泳がれる ---> 泳げる

と大幅な文法上の変更になる。 日本人であると、慣れもあるが問題なく置き換えるが、実際簡単な置き換えではない。

義務の should, must も

日本語: 助動詞でない<ねばばならない>、<なければならない>は、主語の変更はないが、

動詞連体形+義務(名詞)、必要(名詞)がある、は

君は(が)すぐに行く義務 / 必要ある。

となり、実質的な主語は義務 / 必要となり、さらにこれらが<ある>(存在)という言い方で、助動詞からかけ離れる。


sptt

Thursday, November 20, 2014

<できる>、<わかる>は動詞、形容詞、はたまた形容動詞?


このポストは前回のポスト ”ドイツ語の接頭辞(prefix)- 13<ein->” の中の<2)einleuchten>の解説の続編。


<できる>は動詞で、形容詞とか形容動詞と見る人はいないだろう。<できる>は元来<出(で)来(く)る>で、なにかが<出て来る>、古くは<出(いで)来る>の意だ。後で見るように、<出る>の連用形 <で>+<来る>の連用形<き>+<える>(可能を示す動詞語尾)由来も考えられる。

新しい火山(駅、政府)ができる。
にきび(おでき、できもの、みずむし)ができる。<おでき>、<できもの>は動詞<できる>由来の名詞(体言)だ。

<わかる>はもともと<分けれ>ば<わかる>で、分析的なモノの見方を示している。<理解する>では漢語での言い換えになってしまうので、大和言葉を使って<明らかになる>の意味の動詞とする。これまた形容詞とか形容動詞と見る人はいないだろう。

それでは次にような例はどうか?

a)よくできる子だ。
b)よくわかる子だ。

c)よく遊ぶ子だ。
d)よく働く子だ。(児童の労 動ではなく若い労働者)

c),d)の<遊ぶ>、<働く>は動詞でいいが、a),b)は少し様子が違うようだ。

a)-1 太郎はよくできる子だ。 
b)-1 花子はよくわかる子だ。 
c)-1 太郎はよく遊ぶ子だ。
d)-1 花子はよく働く子だ。

以上の<できる>、<わかる>、<遊ぶ>、<働く>はすべて動詞とすると、文法的には体言<子>を修飾する(言い換えると<形容する>)連体形。それでは次はどうか?

a)-2 太郎は数学がよくできる。
b)-2 花子は数学がよくわかる。
c)-2 太郎はよく遊ぶ。
d)-2 花子はよく働く。

c)-2 の<遊ぶ>、d)-2 の<働く>は動詞の終止形でいい。 
ところが a)-2 太郎は数学がよくできる、b)-2 花子は数学がよくわかる、は様子が違う。

< 太郎は数学がよくできる>の構造はやや複雑。文法上、< 太郎は>の<太郎>は<よくできる>の主語ではない。主語は<数学が>の<数学>なのだ。< 太郎は>の<太郎>はいわゆる主題で<太郎についていえば>、<太郎はどうかといえば>という意味なのだ。そうすると<数学がよくできる>の<できる>はどういう意味になるのか。初めに述べた<出て来る>の<出来(でき)る>ではない。<数学がよく出て来る>は明らかにおかしい。この<できる>は<可能>とか<xx する能力がある>の意を表わしている。<出る>の連用形 <で> + <来る>の連用形<き>+える(可能を示す動詞語尾)と考えられる。de + ki + eru -->de + ki + ru 、意味としては<出てこられる(これる)>だ。

<出る>の活用
未然形 -出ない
連用形 - 出ます、出て行く、出て来る
終止形 - 出る
連体形 - 出るとき
仮定形 - 出れば

<来る>の活用
未然形 - こない
連用形 - きます、きて帰る
終止形 - くる
連体形 - くるとき
仮定形 - くれば

<わかる>についても同じようなことがいえ、ほとんど繰り返しになるが、

<花子は数学がよくわかる>。<花子は>の<花子>は<よくわかる>の主語ではない。主語は<数学が>の<数学>なのだ。<花子は>の<花子>はいわゆる主題で<花子についていえば>、<花子はどうかといえば>という意味なのだ。そうすると<数学がよくわかる>の<わかる> はどういう意味になるのか。<わかる>は初めに述べた<理解する>とすると、<数学がよく理解する>になるがこれは明らかにおかしい。 なぜおかしいのかは、<わかる>を動詞とすると自動詞で<xx をわかる>とはいわず、<xx がわかる>となり、<xx>が<わかる>の対象でもあり、主語でもあるのだ。一方<理解する>は他動詞で<xx を理解する>と言い、<xx が理解する>とは言わない。外国人の日本語学習者が<xx をわかる>とか<xx が理解する>というのをときどき耳にするので、日本語の難しいところの一つなのだろう。もっとも本家の日本人の方は<xx を理解する>とはほとんど言わずに<xx が理解できる>で済ましているようだ。<xx を理解する>はしっくりこないのだ。上で示した漢語の<理解>を使わない<明らかになる>は<なる>があるため<わかるようになる>の意で<わかる>とは違う。<わかる>は変化、過程を示すだけの動詞ではなく、<わかっている>状態をあらわす形容詞、形容動詞的な動詞でもあるのだ。英語の to know も同じようなところがあり、<知る>というよりは<知っている>の意が主だ。さらに<わかる>の場合、<わかる>の意味自体に<可能、xx する能力がある>の意があるのが特徴。

<xx がわかる>となり、<xx>が<わかる>の対象でもあり、

<xx がわかる>となり、<xx>が<わかる>の主語でもある

この矛盾は、別のところで書いたが、<が>を対象を示す格助詞とすると解決する。


太郎は数学ができる
花子は数学がわかる

以上の二つを

象は鼻が長い

と比べてみる。

 文法構造上は

太郎、花子、象は主題(象が長いわけではない)
数学、鼻が主語
<できる>、<わかる>は(自)動詞の終止形、<長い>は形容詞の終止形。

違うのは<できる>、<わかる>が動詞で、<長い>が形容詞、と言うことだ。<できる>、<わかる>は活用から見れば明らかに動詞だ。

太郎は数学ができる
花子は数学がわかる

は、すでにはじめの方で書いたが、動詞的な意味と形容詞的、あるいは問題の多い<形容動詞>的な意味がある。

動詞的な意味

太郎は数学ができる -->太郎は数学ができるようになる
花子は数学がわかる -->太郎は数学がわかるようになる

形容詞的、形容動詞的な意味

太郎は数学ができる -->太郎は数学ができる状態にある
花子は数学がわかる -->太郎は数学がわかる状態にある

だが、大体は形容詞的、形容動詞的な意味で使っている。

手もとの辞書で<できる>、<わかる>を調べてみたが、たいそう複雑だ。動詞扱いのためかいずれも<xxする>と結論している。

<できる>、<わかる>と同じような動詞がないか探してみた。文法的法則がありそうだ。



<要(い)る>
太郎は花子が欲しい。 <欲しい>意味からすると動詞みたいだが、活用は形容詞。
太郎は花子が好き(だ)。 <好き>は形容詞のようだが、<好きな>、<好きだ>の活用から一応形容動詞。
太郎は花子が要(い)る。 <要る>は活用から動詞で自動詞。 

<花子が欲しい>は<花子>という(直接目的語のような)対象があるので、形容詞らしくない。英語でいえば Hanko is desired (by Taro). とか Hanako is desirable (for Taro), とでもなるか。しかし、実際にはもっと端的に、Taro wants Hanako. と言うだろう。<太郎は花子が好き>に比べると<太郎は花子が欲しい>より動詞性がある。<欲しがる>はあるが<好きがる>は聞かない。
<要る>は<を>ではなく<が>をとることから形容詞的、形容動詞的だ。 同じような意味の<太郎は花子が必要だ>の<必要だ>は、問題は多いが、文法上は形容動詞だ。

<見える>、<聞こえる>

<見える>は<xx が見える>で自動詞だが、<xx>は主語と言うよりは<見える>の対象(物)だ。英語でいえば xx is visible. となる。 visible は形容詞だが visible のible に注意したい。

<聞こえる>も<xx が聞こえる>で自動詞だが、<xx>は主語と言うよりは<聞こえる>の対象(物)だ。英語でいえば xx is audible. となる。 audible は形容詞だがこれまた audible のible に注意したい。

この二つ(いずれも感覚動詞でやや特殊といえる)の連想から

<におう>はどうか?

<におう>は<xx がにおう>で自動詞だが、<xx>は主語と言うよりは<におう>の対象(物)だ。英語でいえば xx smells. となる。 to smell は形容詞ではなく動詞、自動詞だ。smelling と言う現在分詞形の形容詞はあるが smellable というのはなさそう。。smelling は大体いやなにおいの場合で、いいにおいの場合はfragrant だ。fragrantable と言う形容詞はない。<におう>やや特殊だ。

<あじわう>は他動詞、<xx があじわえる>は応用可能。<ふれる>、<さわる>は自体他動詞のようだが<xx がふれる>、<xx にふれる>、<xx がさわる>、<xx にふれる>自動詞。これらもやや特殊だ。

その他の動詞はどうか。

読む - 読める

ここは静かなので本がよく読める。

主語がないようだが、<本>が<読める>の主語。<誰か>を加えたければ<ここは静かなので、太郎は本がよく読める>となる。<太郎は本がよく読める>は上記の論議が適用できる。


太郎、花子 - 主題
本、数学、花子 -主語
読める、できる、わかる、要る - 動詞

この本は子供が(でも)読める。

これは別の検討が必要のようだ。

この本 - 主題
子供 -主語
読める - 動詞
<子供が>は<子供でも>で置き換えらる。意味は違う。

この本は子供でも読める。

の場合、<子供でも>の<子供>は主語か?

英語で言えば

Even children can read this book.

となるだろう。<子供でも>の<子供>は主語といえそう。日本語の方(この本は子供でも読める)に忠実に訳せば

This book can be read by even children.

となる。受身構文だ。主語はThis book (この本)。children(子供)はこの場合文法上は能動(主動)者になる。 受身構文を使わずに次のようにいうこともできる。

This book is readable for even children.

readableは形容詞だが、ここでも  readable のable に注意したい。

突然だが<釣(つ)れる>はどうか?

ここでは鯛(たい)がよく釣れる。

ここでは - 主題
鯛 - 主語
釣れる -動詞

<釣(つ)れる>は自動詞だが可能の意味がある。<xxする能力がある>の意はない。他動詞は<釣る>で、<鯛をつる>になる。英語でいえば Tai(鯛)can be fished here. とでもなるか。 Tai(鯛) are fishable here. はどうか。 調べてもらえばわかるが、to fish はやや特殊な動詞で他動詞だが、to fish fish とはいわない。

その他 売れる、買える、泳げる、遊べる、<xx える>動詞であれば一般的に上記の論議が適用できそうだ。

<売れる>、<買える>は他動詞そうにみえるが<xx を売れる>、 <xx を売れる>はダメで<xx 売れる>、 <xx 売れる>で自動詞扱いになること、また意味上は<可能>や<xxする能力がある>の意が在ることに注意。<可能>には<xx してもいい>の許可の意もある。この辺は英語で言えば(中国語もそうか)助動詞、モーダル動詞がからんでいるようで、おもしろい検討対象だ。


まる/める動詞

止まる(自動詞)-止める(他動詞)
休まる(自動詞)-休める(他動詞)
高まる(自動詞)-高める(他動詞)
早まる(自動詞)-早める(他動詞)
 (これはいくらでもある)

 止まる、高まる、などに可能、能力の意味はない。

 ここではバスがとまる。

ここでは - 主題
バス - 主語
止まる -動詞

<ここではバスがとまる>は何かおかしい。  <ここではバスがとまらない>ならおかしくないが<ない>は否定の形容詞だ。

<ここではバスが止まれる>はよさそうだ。<ここでバスが止まれる>は問題ない。この場合<止まれる>は可能とも<許されている>とも考えられる。

ここでは体(からだ)が休まる。

<ここではが休まる>、<ここで体が休まる>はよさそうだが少し変。 可能、許可の意を含ませて<ここで(は)が休ませられる(休めれる)>はごく自然だ。<よさそうだが少し変>なのは<休まる>のいくらか可能の意があるからだろう。

 ここでは車の事故率が高まる。

ここでは - 主題
車の事故率 - 主語
高まる -動詞

 <ここでは車の事故率が高まる>はまったく問題ない。<高まる>に可能、許可、能力の意味はない。だが<高まる>は形容詞の<高い>が自働詞化したものだ。

 ここでは車の速度が早まる。

これは問題なさそう。<早まる>にも可能、許可、能力の意味はなく、<早まる>は形容詞の<自派やい>が自働詞化したものだ。


その他

xx が知(し)れる、知られる (xx 知(し)れるようになる、知られるようになる、xx 知れている、しられている)

<知る>は認識の代表動詞だが他動詞。<xx を知る>と使う。すでに書いたが、英語の to know は<知っている>で,いわば形容詞的、形容動詞的な意味の動詞だ。動詞的な<知る>の場合は to become to know となる。

いける、 いけない: これはいける。美代子はいける子だ。<次郎はいけない子だ>の場合、<ない>は否定の形容詞。<いける(i-ke-ru)>は元来<行きえる (i-ki-e-ru)> で<行く>の可能形。<できる(de-ki-ru)>、<できえる(de-ki-e-ru)> と似ている。


すでに混乱している形容動詞の定義をますます混乱させることになるが、<できる>、<わかる>のような動詞を<第二>形容動詞としたらどうか?

sptt


Saturday, November 15, 2014

ドイツ語の接頭辞(prefix)- 13<ein->


ドイツ語の接頭辞(prefix)の第13弾で<ein->について調べてみる。このポストは前回のポスト ” <こむ>、<こめる>、<こまる>、<こもる> ” と大いに関係がある。相良独和大辞典の解説は、

"
動詞の分離前綴としてアクセントを有し、” 内への方向、状態の変化、破壊、減少、内在 ” などの意を表わす。

"

と簡単だ。破壊、減少を<内への方向>への<状態の変化>とみれば、内在も含めて矛盾なく統一されている(<創造、増加> は<外への方向>への<状態の変化>になるか)。<状態の変化>は動詞に関してはきわめて一般的な表現で、

1)物理的な<状態の変化>: 動く、移る
2)化学的な<状態の変化>: 溶ける、固まる
3) 生物学的な<状態の変化>: 生まれる、成長する、死ぬ
4)認識的な<状態の変化>: 知る、わかる、忘れる
5)感覚的な<状態の変化>: 見える、聞こえる、匂う
5)感情的な<状態の変化>: 笑う、怒(おこ)る、泣く

など、際限がなく、<変化がない>ことを示す動詞(存在を表わす動詞-ある、いる、無変化を表わす動詞-とどまる、残る、形容詞的、形容動詞的な動詞)以外はほとんどの動詞に当てはまりそうで、そうなると<ein->の役割はなにか? いわゆる<強調>か? 調べてみればわかるが、<ein->に<強調>の役割はほとんどない。<状態の変化>はモトの動詞の<強調>ではなく、名詞、形容詞を動詞に変える働きだ。

名詞の場合は複雑で簡単に<XX(名詞)になる>ではない。



小さな町が都会になる。

<都会>はあくまで体言(名詞)だ。都会の属性を示そうとすれば<小さな町が都会のようになる>となる。

問題が複雑になる。

複雑になる - 1)<体言(名詞)+になる>とも、2)形容動詞<簡単な>の連用形<複雑に>+<なる>とも考えられる。複雑は<複雑なこと>と見れば抽象体言(名詞)になるが<複雑>には属性がともなうので形容詞的でもある。

形容詞の場合は<XX く(形容詞の連用形)になる>でいい。

以上の他に、<ein->動詞を調べているうちに予想外に発見をした。

1) <ein->は<xx 込む>,<xx 込める>

相良独和大辞典には<ein->がつく動詞はなんと500以上あるが、日本語動詞による解説のなかで<込む>がつく複合動詞の引用が100語ほどある。明らかに<ein->と<込む>は意味上関連が深いといえる。<ein->、<込む>とも主要な意味は<内への方向>だ。ただし<ein->は字面(じづら)から(英語の in または into に相当)<内への方向>というのがわかるが、<込む>は字面から<内への方向>の意味わかりにくい。

これについては前回のポスト ” <こむ>、<こめる>、<こまる>、<こもる> ”  にかなり詳しく書いたので、ヒマと興味のある人はこのポストを読んでください。もっとも<xx 込む>,<xx 込める>の<xx>の動詞を探すのに相良独和大辞典の<ein->動詞項目は大いに役立った、というのが本当のところだ。英語の辞書では<in->(m、p の前では<im->になる)が頭にくる動詞はドイツ語の <ein->動詞に比べさほど多くない。また、英語では形容詞が多いが否定の<in-(im-)>もある。

2)einleuchten

英語訳:to be clear, to be evident (Collins German-English Dictionary)

英語訳は動詞ではなく形容詞。 何か変だ。動詞は形容詞ではないのだ。動詞を使えば to become (get) clear, to become (get) evident だが、当然意味は違ってくる。形容詞の場合は<状態>を示すが、動詞を使った場合は<状態の変化>を示すことになる。leuchten は自動詞で to shine、to glow、 to flash (かがやく、照る、光る)の意味があるが<明るい>(形容詞)の意味はない。<かがやく>、<照る>、<光る>は光がないモノ、場所が<かがやくようになる>、<照るようになる>、<光る用ようになる>とすれば動詞的だが、<かがやいている>、<照っている>、<光っている>はとすれば形容詞的、形容動詞的な動詞になる。特に be + xx ing で現在進行形になる英語と違って現在形が現在進行形を兼ねるドイツ語(leuchten)や日本語では<かがやく>、<照る>、<光る>は動詞的な動詞にもなり、形容詞的、形容動詞的な動詞にもなる。(文末参照)

日本語訳: xx がわかる (相良独和大辞典)

<わかる>は動詞のようだが<わたしはこの問題がわかる>は<象は鼻が長い>の<長い>と同じ形容詞とも、対格の<が>をとる他動詞と考えられる。活用は動詞型だ。

中国語訳: 使明白(某インターネット独中辞典) <明白にする>の意だろう。

<明白>は元来形容詞だろうが、中国語の融通無碍(ゆうずうむげ)さから、名詞にも動詞にもなるようで、

我明白。 

はよく耳にする。普通目的語はない、省かれる。意味は<(私は)わかる、わかった)>で<明白>は動詞のように見える。相良独和大辞典には einleuchten の次の例文がる。

Das mir nicht einleuchten.

私にはそれがどうしてもわからない。

日本語訳の方はもっと簡単にいえば、<私はそれがわからない>だ。中国語でいえば<我不明白>だ。

 das mir nicht einleuchten

これは原形の einleuchten が使われているのでは完全な文ではない。das は主語ではなく目的語。主語が複数で、時制が現在ならこれ(einleuchten)でいいが、そうでなければ einleuchten を主語の単複(この場合性別は関係ない)、時制で適当に(正しく)変化させないといけない。こも例文のようなような使い方は、日本人はもちろん、英語を母国語とする人、中国人にはなじみが薄く、使いこなすには相当<なれ>が必要だ。さて、日本語の方だが、このドイツ語に少し近づけると

<私にはそれがわからない>

となる。この場合<私>はあきらかに主語ではなく、いわゆる主題のようだが(私についていえば)、それでは<わかる>はなにか? 自動詞か、他動詞か?はたまた形容詞か? 中国語の<明白>に自動詞の働きがあるかどうかわからないが、次のように考えることも出来る。某インターネット独中辞典の einleuchten の中国語訳は<明白>でなく、<使明白>だ。


XXが我を明白にする。(XX使我明白)

ここでは主語が明示されていないが、明白は<明らかな状態を示す>形容詞でおかしくない。

日本語にもどって

私はそれがわからない --> 私にはそれがわからない

さらに

にはそれがわからない --> 私それがわからない

とかえてみる。 意味は通じる。<私それがわからない>の<私>はいったい何だ?<わからない>はいったい何だ? ここでドイツ語の

 das mir nicht einleuchten

にもどってみる。 <私>は mir に似ている。<わからない>は nicht einleuchten に似ている。だがeinleuchten は不定形動詞(英語でいう動詞の原形)に注意。 das mir nicht einleuchten は文ではない。日本語の方は短いが、れっきとした文だ。

<わからない>は、einleuchten の英語訳のように形容詞と見ることもできる。この場合は否定なので
not clear, not evident。

あるいは

xx が<私>それをわからなくする(している)

となる。なんとも変な日本語だが、 理論的ではある。


結論としては<ein->にはこのような働き、使役というよりは因果関係の<因>の働きだ。言い換えればば<xx の状態にする>、さらに言い換えればば<状態の変化>をおこす、もたらす、の意があることになる。<おこす>、<もたらす>は<果(結果>を示す。

einleuchten のような使われ方の<ein->動詞は数は多くないが他にもある。


<ein->自体が破壊、減少を示すれいはなく、破壊、減少関連の動詞について破壊、減少の<状態の変化>をしめしているが、例はさほど多くない。



日本語(大和言葉)を見ると

破壊 - 物理的には、こわす(こわれる)、やぶる(やぶれる)、つぶす(つぶれる)、が代表でさらに、きずつける、切る、くずす、裂(さ)く、割る、などがある。化学的には、溶(と)ける、朽(く)ちる、腐(くさ)る、などがある。以前に<破壊のやまとことば>で検討したことがある。(spttやまとことばじてん<破壊のやまとことば>参照)

減少 - へる

<へらす>、<へる>は複合動詞が多そうだが、意外と少ない。

するへらす、すりへる
使いへらす、<使いへる>はほとんど聞かない。
(くつを)履(は)きへらす、<履きへる>もあまり聞かない。
鉛筆を(鉛筆の芯を)書きへらす、は言いそうだが、これもあまり聞かない。

少し考えると

(衣服を)着へらす   
(水、酒を)飲みへらす
(クッキーを)食べへらす
(xx を)取りへらす

などがあってもよさそうだが、このようには言わない。

<(衣服を)着古(ふる)す>と言うのがあるが<着へらす>とはニュアンスが違う。もっとも衣服は<着古す>とは生地(きじ)が<すりへる>ほど着ることだ。


sptt
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文末参照

(Collins German-English Reverso)

leuchten

   leuch•ten      vi  
a    [+Licht]   to shine  
[Flammen, Feuer, Lava, Zifferblatt]  
to glow  
(=aufleuchten)  
to flash
b    [Mensch]  
mit einer Lampe in/auf etw ($) leuchten      acc   to shine a lamp into/onto sth  
musst du mir direkt in die Augen leuchten?      do you have to shine that thing straight into my eyes?  
kannst du (mir) nicht mal leuchten?      can you point or shine the lamp or   (mit Taschenlampe)   the torch   (Brit)  or flashlight (for me)?  
leuchte mal hierher!      shine some light over here 






Friday, November 14, 2014

<こむ>、<こめる>、<こまる>、<こもる>


<こむ>(自動詞)、<こめる>(他動詞)は、単独では<電車が込む>、<誠意(まごころ)を込める>が思い浮かぶぐらいで、さほど使用 頻度が高いようには思えないが、下記に見るように<xx こむ>、<xx こめる>の形の複合動詞はたいへん多い。特に<xx こむ>は意味が通じればほとんどの動詞につくようで、汎用性がきわめて高く、いわば前にある連用形の主動詞の様態を示す副詞のように使われる。<こまる>、<こもる>も関連動詞だ。

<電車が込む>は英語では The train gets crowded.
<誠意(まごころ)を込める> は to put sincerity (into xx)
<こまる>は to be in trouble
<こもる>は to seclude oneself

とでもなるか? これだけでも<こむ>、<こめる>、<こまる>、<こもる>がいかに特殊な日本語動詞であるかが推測される。おそらく日本語学習の外国人泣かせの動詞の一つだろう。

<xx こむ>

上がりこむ、当てこむ、編みこむ、合わせこむ
意気ごむ、入(い)りこむ
植えこむ(植えこみ)、歌いこむ、打ちこむ、埋めこむ、売りこむ
描(えが)きこむ
追いこむ、負いこむ、送りこむ、押さえこむ、教えこむ、押しこむ、落ちこむ、覚えこむ、思いこむ、織(お)りこむ、折りこむ

買いこむ、掻きこむ(めしを掻きこむ)、かがみこむ、書きこむ、駆けこむ、囲いこむ、担(かつ)ぎこむ、刈りこむ、考えこむ
聞き込む、着こむ、決めこむ、切りこむ
食いこむ、組みこむ、繰(く)りこむ、くるみこむ
消しこむ、蹴りこむ
こすりこむ、困(こま)りこむ、ころがりこむ

差しこむ、さすりこむ、誘(さそ)いこむ
仕こむ、沈みこむ、絞(しぼ)りこむ、しまいこむ、しみこむ、しゃがみこむ(関東方言か)、しゃれこむ、しょげこむ、忍びこむ、信じこむ(<信じる>は<感じる>と同じで、漢語由来)
吸いこむ、滑(すべ)りこむ、すましこむ、住みこむ、すりこむ、ずれこむ、座(すわ)りこむ
背負(せお)いこむ、咳(せ)きこむ、攻めこむ
染めこむ

倒れこむ、たたきこむ、たたみこむ、立(建)てこむ、頼みこむ、黙りこむ、ためこむ、たらしこむ、たれこむ
縮(ちぢ)みこむ
使いこむ、つぎこむ 、作りこむ、つけこむ、漬(つ)けこむ、包みこむ、積みこむ、詰めこむ、連れこむ
て - <て>で始まる動詞はすくなく、<照る>、<照らす>、<出る>、<出来る>があるが<込む>と結びつかない。
溶かしこむ、溶けこむ、どなりこむ、泊りこむ、取りこむ

流しこむ、流れこむ、投げこむ、なぐりこむ、なだれこむ
逃げこむ、煮こむ
縫いこむ、塗りこむ
寝こむ、ねじりこむ、ねりこむ
のめりこむ、飲みこむ、乗り込む

入(はい)りこむ、運びこむ、挟みこむ、走りこむ、話しこむ、はまりこむ、はめこむ、張りこむ
冷えこむ、引きこむ、引きずりこむ、ひっこむ、
吹きこむ、ふけこむ、ふさぎこむ、ぶちこむ、踏みこむ、ふり(振り、降り)こむ、ふれこむ
へこむ(もとは<へりこむ>か?)、へたりこむ
ほうりこむ、彫、掘(ほ)りこむ、惚(ほ)れこむ

舞いこむ、巻きこむ、まぎれこむ、負けこむ、混(ま)じりこむ、迷い込む、丸めこむ、回(まわ)りこむ
磨(みが)きこむ、見こむ
むせこむ
めかしこむ、めりこむ  (<める>と言う動詞はあるのか?)
持ちこむ、盛(も)りこむ

焼きこむ
ゆでこむ
読みこむ、弱りこむ

割りこむ


 <xx こめる>

言いこめる  他動詞。 
押しこめる  他動詞。  <押しこむ>も他動詞。<押しこめる>は<閉じこめる>の意が少しある。たちこめる (霧、煙がたちこめる)  自動詞 <こめる>は元来他動詞だが、<立つ(発生するの意)>は典型的な自動詞で<こめる>は副詞的になっている。昔は<たちこむ>だったろう。
閉じこめる  他動詞。 
ひっこめる  他動詞。 
やりこめる  他動詞。 

 多くの<xx こむ>動詞は<xx こめる>で可能形になる。

上がりこむ  --> 上がりこめる
当てこむ  --> 当てこめる
編みこむ  --> 編みこめる
合わせこむ  --> 合わせめる


<xx こむ>は分類が必要だ。

1.文法上の分類 自動詞 / 他動詞

1)自動詞

上がりこむ
意気ごむ、入(い)りこむ
打ちこむ(<xx にうちこむ>の場合)
落ちこむ、思いこむ(<xx と思いこむ>と言う場合)

かがみこむ、駆けこむ
決めこむ(<xx ときめこむ>と言う場合)、切りこむ(<xx に切りこむ>と言う場合)
食いこむ、繰(く)りこむ(<xx に繰(りこむ>と言う場合)
困(こま)りこむ、ころがりこむ

沈みこむ、忍びこむ、しみこむ、しゃがみこむ(関東方言か)、しゃれこむ、しょげこむ、信じこむ(<xx と信じこむ>と言う場合)
滑(すべ)りこむ、すましこむ、住みこむ、ずれこむ、座(すわ)りこむ
咳(せ)きこむ、攻めこむ(他動詞のようだが、<xx に攻めこむ >と言う)

倒れこむ、立(建)てこむ、頼みこむ(<xx に頼みこむ>と言う場合)、黙りこむ、たれこむ(<xx がたれこむ>と言う場合)
縮(ちぢ)みこむ
つけこむ  主に慣用用法 (<漬けこむ>は他動詞)
溶けこむ、どなりこむ、泊りこむ

流れこむ、なぐりこむ、なだれこむ
逃げこむ
寝こむ
のめりこむ、乗り込む

走りこむ、入(はい)りこむ、はまりこむ、張りこむ(<xx に張りこむ>と言う場合)
冷えこむ、ひっこむ、
ふけこむ、ふさぎこむ、踏みこむ、ふりこむ(マージャン用語)、ふり(降り)こむ(雨、雪)
へこむ、へたりこむ
惚(ほ)れこむ

舞いこむ、まぎれこむ、負けこむ、混(ま)じりこむ、迷い込む、回(まわ)りこむ
見こむ(<xx と見こむ >と言う場合)
むせこむ
めかしこむ、めりこむ

呼びこむ、弱りこむ

割りこむ

-----

2)他動詞

当てこむ、編みこむ、合わせこむ
植えこむ、歌いこむ、打ちこむ(<xx に yy を打ちこむ>の場合)、埋めこむ、売りこむ
描(えが)きこむ
追いこむ、負いこむ、送りこむ、押さえこむ、教えこむ、押しこむ、覚えこむ、思いこむ(<xx を思いこむ>と言う場合)、織(お)りこむ、折りこむ

買いこむ、掻きこむ(めしを掻きこむ)、書きこむ、囲いこむ、担(かつ)ぎこむ、刈りこむ、考えこむ
聞き込む、着こむ、決めこむ(<xx をきめこむ>と言う場合)、切りこむ(<xx を切りこむ>と言う場合)
組みこむ、繰(く)りこむ(<xx を繰(りこむ>と言う場合)、くるみこむ
消しこむ、蹴りこむ
こすりこむ

差しこむ、さすりこむ、誘(さそ)いこむ
仕こむ、絞(しぼ)りこむ、しまいこむ、信じこむ(<xx を信じこむ>と言う場合)
吸いこむ、すりこむ、ずれこむ、座(すわ)りこむ
背負(せお)いこむ
染めこむ

たたきこむ、たたみこむ、頼みこむ(<xx を頼みこむ>と言う場合)、ためこむ、たらしこむ、たれこむ(<xx をたれこむ>と言う場合)
使いこむ、つぎこむ 、作りこむ、漬(つ)けこむ、包みこむ、積みこむ、詰めこむ、連れこむ
溶かしこむ、取りこむ

流しこむ、投げこむ
煮こむ
飲みこむ、

運びこむ、はめこむ、張りこむ(<xx を張りこむ>と言う場合)
引きこむ (<ひっこむ>は自動詞。 他動詞は<ひっこめる>で<引きこむ>とは意味が違う)
吹きこむ、ぶちこむ、振りこむ (電気代を振りこむ)、ふれこむ
ほうりこむ、彫、掘(ほ)りこむ

巻きこむ、丸めこむ
磨(みが)きこむ、見こむ(<xx を見こむ >と言う場合)
持ちこむ、盛(も)りこむ

焼きこむ
呼びこむ
ゆでこむ
読みこむ

割りこむ  <xx に割りこむ>は自動詞。<xx を割りこむ>は<を>をとるので他動詞に見えるが意味内容は他動詞らしくない。<xx を割りこむ>は<xx を過ぎる>の意に近い。


元来<こむ>は<電車が込む>、<負けが込む>のように自動詞だが、他の動詞との組み合わせで他動詞になる。この場合他の動詞は基本的には他動詞。この場合<こむ>は副詞的とみなせる。これが今回のポストの一つのポイント。


一方他の動詞が他動詞でも複合動詞としては自動詞になる場合がある。

打ちこむ(<xx に打ちこむ>の場合)は自動詞。例)勉強に打ち込む。物理的な<xx を yy に打ちこむ>の場合は他動詞。<打つ>は他動詞。

思いこむ(<xx と思いこむ>と言う場合) <思う>は他動詞のようだが<xxを思う>(他動詞)と<xxと思う>(自動詞だろう)の使い方がある。

決めこむ(<xx ときめこむ>と言う場合)。<決める>は他動詞のようだが<xx を決める>と<xx と決める>の使い方がある。

切りこむ(<xx に切りこむ>と言う場合)。<切りこみ>を入れるの<切りこむ>だ。

食いこむ <食(く)う>は他動詞。<xx に食いこむ>と言う

繰(く)りこむ(<xx に繰(りこむ>と言う場合)。<繰る>は他動詞。

攻めこむ <xx を攻める>とは言うが、<攻めこむ>は<xx を攻めこむ>ではなく<xx に攻めこむ>。

立 (建)てこむ <立てる>は他動詞だが<立つ>は自動詞。<立てる>下二段活用<たてます>。<立(建)つ>は五段活用。<立(建)ちます>。した がって<立(建)てこむ>の<立(建)て>は他動詞の<立(建)てる>。しかしながら、<立(建)てこむ>は<この辺は家が立(建)て込んでいる>と使 う。

つけこむ - この場合の<つける>は<付ける>と言うよりは<突く>のようだが、<突く>は五段活用だ。<突ける>は(付く)の可能形。<付ける>は他動詞。

なぐりこむ - <なぐる>は他動詞。

張りこむ - <張る>は<氷が張る>で自動詞<紙を張る>で他動詞。<張りこむ>の<張る>は<氷が張る>の<張る>で自動詞。

ひっこむ - <ひっこむ>は<引き込む>がなまった(音便化した)もの。<ひく>は<潮が引く>で自動詞、<綱を引く>で他動詞。<ひっこむ>、<引き込む>の<引く>は自動詞のようだが他動詞とも考えられる。<ひっこめる>は他動詞。

ふさぎこむ - <ふさぐ>は他動詞で五段活用。自動詞は<ふさがる>でこれも五段活用。したがって<ふさぎこむ>の<ふさぐ>は他動詞。

踏みこむ  - <踏む>は他動詞。

回(まわ)りこむ - <xx を回る>という言い方があり、<xx を回(まわ)りこむ>と言えそうだが<xx に回(まわ)りこむ>が普通だ。

見こむ(<xx と見こむ >と言う場合)

割りこむ  - <割る>は他動詞。対応する自動詞は<割れる>。

自動詞の<くむ>複合動詞は文法的にはかなり複雑。 基本的には前の動詞が主要な意味で、、こむ>は副次的、言い換えるとこれも副詞的な使い方だ。他動詞の<くむ>複合動詞と違うのは
主動詞が他動詞にもかかわらず<くむ>複合動詞が自動詞になうものがけっこうあることだ。


2.意味による分類

1)<すっかり xx する> 、<相当十分に xx する>

この意味での<こむ>が一番汎用性が高いようだ。ほとんどどんな動詞にでもつく。上記の例では

上がりこむ  <上がりこむ>は<家の中へ入り込む>の意もあるが、場合によっては<すっかり家の中へ入る、はっている>の意がある。 
歌いこむ
刈りこむ
仕こむ
しゃれこむ
作りこむ
漬(つ)けこむ
煮こむ
寝こむ
走りこむ
話しこむ、
冷えこむ
ふけこむ
磨(みが)きこむ
めかしこむ
ゆでこむ
読みこむ
焼きこむ
弱りこむ

他にもやたらある。たとえば調理場(台所)、工場でしていることの動詞だ。大代表は<つくる>で、<つくりこむ>ことになる。<しこみ>も大切だ。重複があるが次のようになる。

調理場、台所(一種の食物加工工場)、工場で

(穴を)あける
(油で)揚げる
あたためる
あぶる
洗う
選ぶ
圧(お)す
かき混ぜる
かわかす
きざむ
切る
こねる
しぼる
すすぐ
(大根、しょうがを)する
そろえる
炊(た)く
たたく
ちぎる
漬ける
詰める
並べる
煮る
伸ばす
引き伸ばす
浸(ひた)す
冷やす
広げる
まぶす
丸める
ぬらす
蒸(む)す
盛る
焼く
ゆでる
(きりがないようなので、とりあえずこれまで)

以上動詞にはほとんど<こむ>をつけられる。

(油で)揚げる - 揚げこむ
あぶる - あぶりこむ
洗う - 洗いこむ
選ぶ - 選びこむ
圧(お)す - 圧(お)しこむ
きざむ  - きざみこむ
切る  - 切りこむ
こねる  - こねこむ
しぼる  - しぼりこむ
すすぐ  - すすぎこむ
(大根、しょうがを)する  - すりこむ
炊(た)く  - 炊(た)きこむ
たたく - たたきこむ
漬ける  - 漬けこむ
煮る  - 煮こむ
浸(ひた)す - 浸しこむ
冷やす - 冷やしこむ
混ぜる - 混ぜこむ
まぶす  - まぶしこむ
ぬらす  - ぬらしこむ
蒸(む)す  - 蒸しこむ
焼く  - 焼きこむ
ゆでる  - ゆでこむ


以上は<すっかり xx しない> 、<相当十分に xx しない>とうまいもの、出来のいい製品が出来ないので、次のような言い方が可能だ。

揚げこみが足りない
あぶるこみが足りない
洗いこみが足りない
選びこみが足りない
圧(お)しこみが足りない
きざみこみが足りない
切りこみが足りない
こねこみが足りない
しぼりこみが足りない
すすぎこみが足りない
すりこみが足りない
炊(た)きこみが足りない
たたきこみが足りない
漬けこみが足りない
煮こみが足りない
浸しこみが足りない
冷やしこみが足りない
混ぜこみが足りない
まぶしこみが足りない
ぬらしこみが足りない
蒸しこみが足りない
焼きこみが足りない
ゆでこみが足りない

 スポーツ関係では(これも一部重複するが)

打ちこみがたりない(野球、テニス、ゴルフ、その他)
泳ぎこみがたりない(水泳)
投げ込みがたりない(野球の投手)
走りこみがたりない(野球、マラソン、その他)
踏みこみがたりない(相撲、剣道)

学習関係では(これも一部重複するが)

歌いこみがたりない
描きこみがたりない(絵画)
書きこみがたりない
きたえこみがたりない
調べこみがたりない
弾きこみがたりない(ピアノ、ギター、その他)
踏みこみがたりない(比喩的)
読みこみがたりない

 他の分野でも他にまだまだありそう。

しかしながら、 <すっかり xx する> 、<相当十分に xx する>にはほかの言い方がかなりあり、言い換え可能もあれば(意味が、ニュアンスが微妙にちがう)、ダメなのもあり、これは背後には<こむ>、<こめる>の本来の意味が残っているためだ。

xx あげる、あがる
xx きる
 xx つくす、つきる
 xx 果たす、果てる

これらと<こむ>の意味の比較はこれまた<きりがない>ようなので、次の意味に移る。


2)<xx の中に入(はい)る、入(い)れる>の意味

冒頭で取り上げた<こむ>の複合動詞でこの意味があるのは

上がりこむ、編みこむ、入(い)りこむ、植えこむ
打ちこむ <xx を yy に打ちこむ>の場合
埋めこむ 、追いこむ、送りこむ、押しこむ、落ちこむ
覚えこむ  <頭(記憶)に入れる>の意がある。
織(お)りこむ
折りこむ   <xx を yy に折りこむ>の場合。チラシを新聞に折りこむ。

掻きこむ(めしを掻きこむ)
書きこむ <xx を yy に書きこむ>の場合。 クエスチョンマーク(疑問符)を余白に書きこむ。
駆けこむ、囲いこむ、担(かつ)ぎこむ、切りこむ、食いこむ、組みこむ、くるみこむ、蹴りこむ、
こすりこむ、ころがりこむ

差しこむ、さすりこむ、誘(さそ)いこむ、忍びこむ、しまいこむ、しみこむ、吸いこむ、滑(すべ)りこむ、住みこむ
すりこむ、攻めこむ、染めこむ

たたきこむ、たたみこむ、ためこむ、たらしこむ、たれこむ、つぎこむ、つけこむ、漬(つ)けこむ、
包みこむ、積みこむ、詰めこむ、連れこむ、溶かしこむ、溶けこむ、どなりこむ、泊りこむ、取りこむ

流しこむ、流れこむ
投げこむ <xx を yy に<xx を yy に書きこむ>の場合。 小石を小川に投げこむ。
なぐりこむ、なだれこむ、逃げこむ、縫いこむ、塗りこむ、ねじりこむ、ねりこむ、のめりこむ、飲みこむ
乗り込む
運びこむ、挟みこむ

走りこむ  <xx が yy に走りこむ>の場合。
入(はい)りこむ、はまりこむ、はめこむ、ひっこむ、吹きこむ、ぶちこむ、踏みこむ、ほうりこむ、彫、掘(ほ)りこむ

舞いこむ、巻きこむ、まぎれこむ、混(ま)じりこむ、迷い込む
丸めこむ <xx が yy に丸めこむ>の場合。 焼き芋(やきいも)を新聞紙にまるめこむ。
持ちこむ

割りこむ

以上は自動詞、他動詞を分けていない。 自動詞、他動詞いずれにしても<xx の中に入(はい)る、入(い)れる>の意味があるモノ。判断基準は文法的に<xx が yy に zz こむ>(自動詞)、<xx を yy に zz こむ>(他動詞)が成り立ち意味があるモノ。日本語ではいずれの動詞も<こむ>がつているが、英語ではこうは行かない。すべて<動詞 + in>、<動詞 + into>ですむほど間単ではない。また、逆の見方をすると、<動詞 + in>、<動詞 + into>の英語を日本語に訳すときに<こむ>を生かした方がいい場合でも簡単に、中立的な<xx に入(はい)る、入(い)れる>と訳しがちだ。次の<xx 入(はい)る>、<xx 入(い)れる>となりがちなのだ。
 

以上を<入(はい)る>、<入(い)れる>で置き換えてみる。

上がり入(はい)る   あまり聞かないがよさそう。
編み入れる
入(い)り入(はい)る   ダメ
植え入れる
打ち入れる
埋め入れる
追い入れる
送り入れる
押し入れる
落ち入(はい)る    ダメ   落ち入(い)る -->陥(おちい)る
覚え入れる
織(お)り入れる
折り入れる

掻(か)き入れる(めしを掻き入れる)
書き入れる
駆け入(はい)る    ダメ
囲い入れる 
担(かつ)ぎ入れる
切り入(はい)る ダメ、  <切り入れる>もダメ。  <切りこむ>は自 / 他動詞。
食い入(はい)る  ダメ   <食い入(い)る>慣用用法がある。<食い入るように見る>
組み入れる
くるみ入れる
蹴り入れる
こすり入れる    ほぼダメ
ころがり入(はい)る  ほぼダメ  

差し入(はい)る  ほぼダメ   <差し入れる>はOK。 <差しこむ>は自 / 他動詞
さすり入れる    ほぼダメ
誘(さそ)い入れる
しまい入れる
しみ入(はい)る  ダメ  --> しみ入(い)る
吸い入れる
滑(すべ)り入(はい)る  ほぼダメ
住み入(はい)る   ほぼダメ
すり入れる    ほぼダメ
攻め入(はい)る  <攻め入(い)る>が普通。
染め入れる

たたき入れる  
たたみ入れる  ほぼダメ
ため入れる    ダメ
たらし入れる
たれ入(はい)る  ダメ  たれ入れる ダメ (-->たらしいれる) <たれこむ>は自 / 他動詞
つぎ入れる
つけ入(はい)る  ダメ --> つけ入(い)る
漬(つ)け入れる  ダメ
包み入れる    ほぼダメ
積み入れる
詰め入れる   ダメではないがややおかしい。<詰め入(い)る>は聞くが、これは自動詞。
連れ入れる   ダメ
溶かし入れる
溶け入(はい)る   ダメ  --> 溶け入(い)る
どなり入(はい)る  ダメ
泊り入(はい)る   ダメ
取り入れる

流し入れる
流れ入(はい)る   ダメ
投げ入れる
なぐり入(はい)る   ダメ
なだれ入(はい)る   ダメ
逃げ入(はい)る    ダメ 
縫い入れる
塗り入れる   ダメ
ねじり入れる
ねり入れる
のめり入(はい)る   ほぼダメ
飲み入れる       ダメ
乗り入(はい)る   ダメ

運び入れる
挟み入れる      ほぼダメ
走り入(はい)る     場合によってはOK
入(はい)り入(はい)る   ダメ
はまり入(はい)る   ダメではないがややおかしい。 
はめ入れる
ひっ入(はい)る、引き入(はい)る    ダメ
吹き入れる
ぶち入れる    ダメ
踏み入(はい)る    ほぼダメ。 <踏み入れる>となる。これは<xx 入れる>だが自動詞。
ほうり入れる
彫、掘(ほ)り入れる

舞い入(はい)る    ダメ
巻き入れる       場合によってはOK
まぎれ入(はい)る  ほぼダメ 
混(ま)じり入(はい)る  ほぼダメ 
迷い入(はい)る   ダメ
丸め入れる     ほぼダメ  <まるめこめる>慣用が主。

割り入(はい)る

以上のOK,ダメ判断は個人的な意見だ。 

a)<入(い)り入(はい)る>、<入(はい)り入(はい)る>はナンセンスのようだ。

b) 概して自動詞は<入(はい)る>での置き換えはダメなものが多いが、<入(い)る>ならいい場合が多い。かなり複雑。

落ち入(はい)る   ダメ   落ち入(い)る -->陥(おちい)る。 ただし<落ちこむ>には慣用用法がある。

駆け入(はい)る    ダメ  <駆け入(い)る>もダメ
 
食い入(はい)る  ダメ   <食い入(い)る>慣用用法がある。<食い入るように見る>。ただし<食いこむ>とは意味が違う。

ころがり入(はい)る  ダメ   <ころがり入入(い)る>もダメ。

差し入(はい)る  ほぼダメ。 <差し入(い)る>もダメ。 

しみ入(はい)る  ダメ  --> <しみ入(い)る>はOK。岩にしみ入るせみの声。<岩にしみこむせみの声>も即物的だが悪くはない 

滑(すべ)り入(はい)る  あまり聞かないがよさそう。 <滑り入(い)る>もダメ。<滑りこむ>はやや慣用的な言い方だ。

住み入(はい)る   ほぼダメ。  <住み入(い)る>もダメ。

つけ入(はい)る  ダメ --> つけ入(い)る

溶け入(はい)る  ダメ --> 溶け入(い)る

泊り入(はい)る   ダメ  <泊まり入(い)る>もダメ

なぐり入(はい)る   ダメ  <なぐり入(い)る>もダメ

なだれ入(はい)る   ダメ  <なでれ入(い)る>はよさそう。

逃げ入(はい)る    ダメ   <逃げ入(い)る>はよさそう。

 のめり入(はい)る   ダメ   <のめり入(い)る>もダメ。<のめりこむ>は慣用的な言い方だ。<のめる>という動詞もほとんどきかない。<のめる>は<のる(伸る)>関連の語で、意味も<のる(伸る)>(体を伸ばす、そらす)と関連ありそう。<つんのめる>という動詞がある(関東方言か)。

乗り入(はい)る   ダメ   <乗り入(い)る>もだめ。<乗り入れる>はいいが、これは他動詞で<乗りこむ>とは意味が違う。<乗りこめる>は<乗りこむ>の可能形だ。

はまり入(はい)る   ダメではないがややおかしい。 <はまり入(い)る>も聞かない。<はまりこむ>は慣用的な言い方が主。

踏み入(はい)る   ほぼダメ。<踏み入(い)る>ならよさそう。<踏みこむ>は慣用的な言い方が主。

舞い入(はい)る    ダメ  <舞い入(い)る>はよさそう。<舞いこむ>の意に近い。

まぎれ入(はい)る   これはよさそう。<まぎれ入(い)る>もダメではないだろう。ただし<まぎれこむ>にはかなわない。

迷い入(はい)る   ダメ   <迷い入(い)る>もほぼダメ。

---
どなり入(はい)る  ダメ
なぐり入(はい)る  ダメ

この二つは<どなりこむ>、<なぐりこむ>に物理的な<入(はい)る>の意味がうすく、慣用的な言い方だ。

c)一方他動詞は<入(い)れる>での置き換えがOKのものが多い。

編みこむ - 編み入れる   OK
植えこむ - 植え入れる   あまり聞かないがOKのようだ。
打ちこむ - 打ち入れる   OK  慣用用法の<xx に打ちこむ>は自動詞
埋めこむ - 埋め入れる   OK
追いこむ - 追い入れる   OK
送りこむ - 送り入れる    あまり聞かないがOK
押しこむ - 押し入れる    OK <押入れ>に布団を押し込む
覚えこむ - 覚え入れる    あまり聞かないがOKとする。
織(お)りこむ - 織り入れる  OK
折りこむ - 折り入れる     OK

掻(か)きこむ(めしを掻きこむ) - 掻き入れる(めしを掻き入れる)  あまり聞かないがOK
書きこむ - 書き入れる    OK
囲いこむ - 囲い入れる    OK
担(かつ)ぎこむ - 担ぎ入れる   OK
組みこむ - 組み入れる   OK
くるみこむ - くるみ入れる   OK
蹴りこむ - 蹴り入れる   OK
こすりこむ - こすり入れる    ほぼダメ

差しこむ - 差し入れる   OK  <xx がyy に差しこむ>は自動詞
さすりこむ - さすり入れる    ほぼダメ
誘(さそ)いこむ - 誘い入れる   OK
しまいこむ - しまい入れる    OK
吸いこむ - 吸い入れる     OK
すりこむ - すり入れる   ほぼダメ
染めこむ - 染め入れる   OK

たたきこむ - たたき入れる   OK
たたみこむ - たたみ入れる  ほぼダメ
ためこむ - ため入れる    ダメ
たらしこむ - たらし入れる   OK
つぎこむ - つぎ入れる   OK
漬(つ)けこむ - 漬け入れる  ダメ
包みこむ - 包み入れる  OK
積みこむ - 積み入れる  OK
詰めこむ - 詰め入れる   ダメではないがややおかしい
連れこむ - 連れ入れる   ダメ
溶かしこむ - 溶かし入れる  OK
取りこむ - 取り入れる   OK

流しこむ - 流し入れる   OK
投げこむ - 投げ入れる   OK
縫いこむ - 縫い入れる   OK
塗りこむ - 塗り入れる   ダメ
ねじりこむ - ねじり入れる  OK
ねりこむ - ねり入れる    ダメではないがややおかしい
飲みこむ - 飲み入れる    ダメ

運びこむ - 運び入れる     OK
挟みこむ - 挟み入れる     ほぼダメ
はめこむ - はめ入れる    OK
吹きこむ - 吹き入れる     OK   <吹きこむ>は<xx が yy に吹きこむ>で自動詞。
ほうりこむ - ほうり入れる  OK
彫、掘りこむ - 彫、掘(ほ)り入れる  ダメではないがややおかしい

巻きこむ - 巻き入れる   場合によってはOK
丸めこむ - 丸め入れる  ほぼダメ  


以上もOK,ダメ判断は個人的な意見だ。 ただしOKのものでもニュアンスの違いはある。では、<ニュアンスの違い>とはなにか? 


3)無理やり、力ずくで、抵抗を押し切って<xx の中に入(はい)る、入(い)れる>、さらにはもっと一般的に無理やり、力ずくで、抵抗を押し切って<する>の意。

<入(はい)る>、<入れる><ある囲まれた空間の中に移動する、させる>という基本的に物理的な動作を表わす動詞で。<副詞的な意味>はない。 <副詞的な意味>を出すには副詞を加えることになる。

ゆっくり(と) 入(はい)る、入れる
のんびり(と) 入(はい)る、入れる
速く 入(はい)る、入れる
あわてて 入(はい)る、入れる

遅れて 入(はい)る、入れる
早く 入(はい)る、入れる

すんなり(と) 入(はい)る、入れる


<こむ>、<こめる>は無理やり、力ずくで、抵抗を押し切って<ある囲まれた空間の中に移動する、させる>の意がある。

泥棒と強盗は違う。

泥棒は<家に入(はい)る>でもいいが、<家に忍びこむ>という言い方たある。強盗は<家に入る>、、<家に忍びこむ>というよりは<家に入りこむ>の方が感じがでる。もっとも日本語では<押し入(い)る>という言い方が普通だ - 強盗が家に押し入(い)る。おもしろいには英語で<強盗が家に押し入る>をどういうかだ。おそらく

A burglar breaks into a house.

だろう。日本語と同じで A burglar inter a house. は可能だが、凄み(すごみ)がない。A burglar breaks into a house. の to break はこの場合<やぶって入(はい)る>で<入る>の意があるのだ。あるいは前置詞の into が<入る>の意をに担(にな)っているとも言える。<こむ>が<入る>の意をに担(にな)っているのと同じだ。英語の話が続いてしまうが。<車が壁に突っ込む>(車が壁に衝突する)は何というか?おそらく

A car run (smash) into a wall.

だろう。これも to run (smash) に<壁の中へ走る、当たる>の<壁の中へ>の意が在るわけではなくinto が<入る>の意をに担(にな)っているといえる。したがって英語ではinto が<入る>、さらには<こむ>の意があると言えよう。このような見方をすると、into は前置詞だが副詞的な役割もしているといえる。何度か述べたように、<xx こむ>はいわば前にある連用形の主動詞の様態を示す副詞のように使われる、のと同じだ。これまた、ここがこのポストのポイント。


少しそれたが話を続ける。


打ちこむ、埋めこむ、押しこむ、こすりこむ、差しこむ、さすりこむ、すりこむ、たたきこむ、詰めこむ、塗りこむ、ねじりこむ、ねりこむ、挟みこむ、はめこむ、彫、掘りこむ

以上の動作、作業をするには力を加える必要がある。 <すんなり>とはいかないのだ。また必ずしも<xx の中(空間)に入る、入れる>の意がなくてもいいのがある。

打ちこむ、こすりこむ、さすりこむ、すりこむ、たたきこむ、塗りこむ、ねじりこむ、ねりこむ、挟みこむ、彫、掘りこむ

以上の動詞の対象は空間と言うより物質だ。


<こめる>は<囲まれた空間に入れる>と関連して <囲まれた空間をつくる>動詞につき、<囲む>、<囲う>、<包む>、<くるむ>、<巻く>関連の動詞との相性がいい。この場合の<こむ>は<入れる>で置き換えられない。

囲いこむ    <囲い入れる>は変だ。
包みこむ    <包み入れる>とはまず言わない。
くるみこむ   <くるみ入れる>ともまず言わない。
巻きこむ    <巻き入れる>とはまず言わない。
たたみこむ   <たたみ入れる>とはまず言わない。
折りこむ     <折り入れる>とはまず言わない。


また受身形、被害形は

囲いこまれる
巻きこまれる

さらに意味は発展(派生)して

こまる‐ 囲いこまれれた状態にいる、置かれる
こもる‐ 自らを囲いこまれれた状態に置く - 閉じこもる


4)<詰(つ)める>の意

<こめる>は<詰める>に似た意がある。<誠意(まごころ)を込める>は<誠意(まごころ)を詰める>で言い換えられるが、これまたニュアンスがちがう。

卵焼きを弁当箱に詰める   <卵焼きを弁当箱にこめる>はダメ
衣服をスーツケースに詰める  <衣服をスーツケースにこめる>はダメ
出来た酒を樽(たる)、瓶(びん)に詰める <出来た酒を樽、瓶にこめる>はダメ

特定の決められた器(うつわ)に何かを入れる場合は<詰める>になるようだ。上記のように無理やり入れる場合は<詰めこむ>になる。誠意(まごころ)は特定の器に<詰める>わけではない。

5)<少なくなる(げんしょう)、なくなる(消滅)>の意味

使い込む
消しこむ



sptt

Tuesday, November 4, 2014

日本語動詞の第二の二大分類-<近づく><つく>動詞 / <離れる>


日本語に限らないが動詞には自動詞 / 他動詞の二大分類がある。これまで<日本語の自動詞、他動詞>というタイトルのポストが<-16>まできた。一方これと並行してドイツ語の接頭語シリーズでは、- 9 <an->と - 10<ab->が進行中(いずれもかなり長くなりつうある)。ここで思いついたのが、日本語動詞の第二の二大分類だ。自動詞 / 他動詞の二大分類は、いろいろ問題がありそうだが、動かしがたい。問題があるところにさらに問題を加えることになりかねないが、問題を解く鍵(かぎ)があるかも知れないので、動詞の自/他以外の二元論としてあえて試みることにした。

別のポスト<ドイツ語の副詞 hin と her>で取り上げたが、ドイツ語には日本人には使いこなしが難しい副詞 hin と her がある。

hin - 話し手から遠ざかって行く運動、方向を表わす。
her  - 話し手の方へ近づいてくる運動、方向を表わす。

またドイツ語の接頭語<an->は<近づく>、<近づける>という意味を内包している。一方<ab->はいろいろな意味を内包しているが、第一義は<離れる>、<離す>だ。これを応用、拡大解釈、あるいは最近開発した<こじつけ方法>を使って<近づく(づける)>、その仲間の<つく、つける>動詞グループ とこれと反対の意味の<離れる(す)>動詞ループの日本語動詞の二大分類を試みる。

<近づく(づける)>、<離れる(す)>は移動、方向さらには拡大解釈して変化が関連している。したがってこれらが関連しない動詞は分類対象にならない。たとえば<ある>、<いる>は具合が悪い。<xx は近づいて、離れている>とはいえるが<いる>自体に<近づく(づける)>、<離れる(す)>の意味はない。さらには移動と関連がありそうだが単に<動き>を示す動詞、たとええば<動く>、<歩く>、<走る>なども<近づく(づける)>、<離れる(す)>を直接示すことはなく<動回る>、<歩き進む>、<走り去る>となってはじめて移動、方向、変化を示す。ということは<近づく(づける)>、<離れる(す)>の二大分類以前に<移動、方向、変化>動詞と<移動、方向、変化>性がない動詞(<存在、単なる動き>を示す動詞など)の二大分類があることになる。

しかしながら、例外のない(文法)法則はなく、たとえば<動く>は<ロボットが動く>のように普通自動詞で単に<動き>を示す動詞と考えられる。<xx から動く>、<xx に(へ)動く>のように助詞を使ってはじめて移動、方向、変化が示される。これはいい。だが、<xx を動くな>となると、この<動く>は自動詞だか他動詞だかわからなくなる。他動詞としては<xx を動かす>で<動かす>があるが、使役的な感じだ。<この椅子を動かす>は他動詞でいいが、<太郎を動かす>は使役的になる。そして、<xx を動くな>は<xx を離れるな>とほぼ同じ意味だ。

このように動詞の分類に問題はつきまとうが話をすすめる。今回の分類は次のようになる。


1.移動、方向、変化を示す(明示、暗示する)動詞

1-1-1.<近づく(づける)>示す(明示、暗示)動詞。

1-1-2.<つく>、<つける>も関連語だが、関連語と言うよりは日本語の大動詞だ。なにしろいろいろな<つく>、<つける>がある。

1-2.<離れる(す)>示す(明示、暗示)動詞

以下に別のポスト ”<つく>(突く、着く、付く )について” からいろいろな<つく>とその反義語を示す。

突く - 引く
着く - 離れる、去る
付く(自動詞) - 離れる、外(はず)れる、はがれる、とれる。 この<とれる>の英語は<to go (come) off>。
付ける(他動詞) - 離す、外す、はがす、とる。 
就く - 離れる、去る。
衝く - 引く、引き下がる、退(しりぞ)く
尽く - 満つ、満ちる; 始まる; 続く
憑く - 離れる、去る 
点く - 消える

見方を変えて<つける、つく>の反対語、<離す、離れる>の関連語を探せばさらにかなりある。

切る-切れる
裂(さ)く-裂ける
割(さ)く
割(わ)る-割れる
分ける-分かれる
散らす-散る
削(けず)るー削れる
脱ぐ-脱げる
取る-とれる
落とす-落ちる
外(はず)す-外れる
は ぐ-はげる-はがれる
そぐ-そげる
もぐ-もげる
剃(そ)る
刈る
除(のぞ)く
ぬぐう
掃(は)く
払う
のける

<つける、つく>と違って違う言葉がでてくるが、基本的には<離す、離れる>で、違う言葉にまぎらされると、<近づく(づける)>、<つく、つける>動詞 / <離れる(す)>動詞の日本語動詞の二大分類が見えなくなる。

2.移動、方向、変化を示さない(明示、暗示しない)動詞

2-1.存在動詞

2-2 単に(純粋に)動きを示す動詞


さて、これから進める話は1-1 と 1-2だ。

1. <取る>と<与える>

<取る>は代表的な動詞で日本語の10大基本動詞の候補だ。一方<与える>は、英語だと give and take でほぼ同等の扱いのようだが、10大基本動詞の候補からほど遠い。日本語では<与える>は思っているほど実際には使われずず、少なくとも日常では<やる>、<くれる>、<あげる>、<さしあげる>、さらには<もらう>が頻繁に使われる。

 <取る>は<xx からyy を取る>と言う使われ方から<取られる>方から見れば<離れる>だが、<取る>方から見れば<近づける>だ。<xx からyy を取る>の<xx から>がない<取る>
単独の<yy を取る>であれば<近づける>動詞グループに入る。
一方<与える(やる)>は<xx に yy を与える(やる)>だから、<与える(やる)>方から見れば<離れる>だが、<与えられる(もらう)>方から見れば<近づける>だ。<xx に yy を与える(やる)>の<xx に>がない<与える(やる)>単独の< yy を与える(やる)>だけであれば<離れる>動詞グループに入る。ところで<与える(やる)>に近い意味に<もらう>に注目すると<もらう>単独では <yy をもらう>で、これは<近づける>グループに入る。話がややこしいので整理すると、

yy を与える
yy をやる
yy をくれる、 yy をくれてやる
yy をあげる、 yy をさしあげる

<離れる(す)>動詞グループ。一方

yy をもらう

は<近づける>動詞グループ、となる。すこし足りないのいので付け加えれば

yy をくださる -<くだす>、<くだる>は<あげる>の反義語。
yy をもらい受ける
yy を受ける、
yy を受け取る - これは<取る>が付いているが<受ける>の意味が基本なので<近づける>動詞グループ。

気づきにくいが、ここに<近づく(づける)>、<離れる(す)>の二大分類の意義がありそう。だが問題は近づく(づける)>、<離れる(す)>が相対的なことだ。


2. <行く>と<来る>

<行く>と<来る> は10大基本動詞の候補だ。<遠い道のりを行く(来る)>と<来る>と<を>をとる表現もあるが、<行く>と<来る>は基本的に自動詞だ。これまた基本的には

<行く>は<離れる>動詞
<来る>は <近づく>動詞

だ。 汎用性の高い言い方に

<xx して行く>、<xx して来る>がある。

飛行機は飛んで行く。 飛行機は上がって行く。(離れる)
飛行機は飛んで来る。 飛行機は降(おり)て(下がって)来る。(近づく)

場所、空間表現だけではない。

この新都市は急速に発展して行く(行った)。 未来 (過去未来)
この新都市は急速に発展して来る(来た)。  未来 (過去未来)

と時間表現もよく使う。


3. <入(はい)る>と<出る>、   in (into)  と out (of, from)

 <入る>は<近づく>、<出る>は<離れる>のようだが、そう簡単ではない。

――――
I     I
I     I_
I     _  <--- A
I     I
I     I
――――

Aが発話者の場合: (私は)xx に入る、入って行く。 <近づく> 発話者の視点は xx の方にある。
第三者が発話者で xx の外にいる場合: Aは(が)xx に入る、入って行く。 発話者の視点が xx の方にあれば<近づく>。発話者の視点が発話者自身の方にあれば<離れる>ことになり、これは<行く>に現れている。
第三者が発話者で xx の内にいる場合: Aは(が)xx に入る、入って来る。 <近づく>

――――
I     I
I     I_
I  A  _  --->
I     I
I     I
――――

Aが発話者の場合: (私は)xx から出る、出て行く。 <離れる>
第三者が発話者で xx の外にいる場合:Aは(が)xx から出る、出て来る。 発話者の視点は xx の方にある場合は<離れる>。発話者の視点が発話者自身の方にあれば<近づく>ことになり、これは<来る>に現れている。
第三者が発話者で xx の内にいる場合:Aは(が)xx から出る、出て行く。 <離れる>

――――
I     I
I     I_
I  B  _  <--- A
I     I
I     I
――――

Aが発話者の場合: (私は) xx に入る、入って行く。 <近づく> 発話者の視点は xx の方にある。
Bが発話者の場合: Aは(が)xx に入る、入って来る。 <近づく>
第三者が発話者で xx の外にいる場合: Aは(が)xx に入る、入って行く。実際には発話者から<離れて>行くのだが、発話者の視点が xx の方にある場合は<近づく>。発話者の視点が発話者自身の方にあれば<離れる>ことになり、<入って行く>の<行く>に現れている。
第三者が発話者で xx の内にいる場合: Aは(が)xx に入る、入って来る。<近づく>


――――
I     I
I     I_
I  A------->  B
I     _
I     I
――――

Aが発話者の場合: (私は) xx から出る、出て行く。 <離れる>
Bが発話者の場合: Aは(が)xx から出る、出て来る。 実際には発話者のほうに<近づいて>行くのだが、発話者の視点が xx の方にある場合は<離れる>。発話者の視点が発話者自身の方にあれば<近づく>ことになり、<出て来る>の<来る>に現れている。
第三者が発話者で xx 外にいる場合: Aは(が)xx から出る、出て来る。 これも実際には発話者のほうに<近づいて>行くのだが、発話者の視点が xx の方にある場合は<離れる>。発話者の視点が発話者自身の方にあれば<近づく>ことになり、これは<出てくる>の<来る>に現れている。
第三者が発話者で xx 内にいる場合: Aは(が)xx から出る、出て行く。<離れる>

以上少しややこしいようだが<入る>/<出る>、<行く>/<来る>の組み合わせだ。<入る>/<出る>、<行く>/<来る>、さらには助詞の<xx に>/<xx  から>は<近づく>/ <離れる>の絶対的な現象ではなく、発話者の視点が<近づく>/ <離れる>を決めるようだ。


4. <引く>と<押す>

<引く>につては以前に<近づく(づける)>、<離れる(す)>の観点から検討したことがある。

ポスト ”<ひく>、<つく>、<おす>について”

調査結果

A.  ひく

ワープロ辞書の漢字: 引く、牽く、轢く、弾く、挽く、曳く、惹く、退く

漢字の多さにだまされてはいけない。 あくまで大和言葉の<ひく>が基本。 <ひく>の物理的な動き、動作は大きく分けると二つになる。

1)基点(動作主(ぬし)がいる場所> <------ 対象物

基点は固定しているのが一般的だが矢印方向に動いてもよい。なんらかの方法で<ひく>と対象物は動作主に近づいてくる(いく)。動作主も動く場合は2)の場合になるのでここでは除外。

漢字では<引く>、<惹く>が相当。英語は<to pull>, <to attract>になる。

 2) 対象物 ------>動作主(ぬし)がいる場所

動作主(ぬし)は矢印方向に動く。 なんらかの方法で<ひく>と対象物は動作主に<つられて>ついてくる(いく)。この場合。<ひく>道具が<張って>いないと具合がわるい。したがって<引き張る> --> <引っ張る>ことになる。

漢字では<引く>、<牽く>、<曳く>が相当。英語は<to tract (tractor)>, <to tag (tag boat)>になる。

<引く>は汎用性があり漢字を用いない<ひく>に近い。 はやくいえば、1)も2)も見方を広げれば同じことだ。

ところが、話はそう簡単ではない。

3)線を引く

<線を引く>は<to pull>, <to attract>の<ひく>でも<to tract>, <to tag>の<ひく>でもない。
英語は<to draw a line>だ。Drawing は線によるスケッチだ。

線を描(えが)く、特に直線を描く場合、中国の書道(書法)や山水画の画法では筆を前方に押しながら描く特殊方法があるが(それなりに特殊効果があるようだ)、普通は手前に<引い>て描く。

線 を<かく、書く、描く>という言い方もあるが、この<書く>は曲者で、漢字で<書く>と書くとなにか文明を感じさせるが、もとはといえば<引っかく>の <掻(か)く>で、<引き><掻く>だ。<書く>と<掻く>は同源だろう。したがって、字を<書く>のも基本的な動作は<引く>だ。大昔は<引っ掻いて> 線や、絵や、字を<かい>たのだ。

なお、<糸を引く>という言い方がある。<線を引く>ような感じだ。納豆が<糸を引く>。蜘蛛(クモ)も<糸を引く>ようなことをする。よくわからないが、<糸を吐く>とも言えそうだ。繭(マユ)もも<糸を引く>ようなことをするが、これは何と言うのか。

粘性のある物質はある部分<引く>と糸状になるが、これは一次元での動作。英語では to lengthen とか to stretch 。<引いて伸ばす>ので<引き伸ばす>だ。写真の<引き伸ばし>は二次元の動作。英語で to enlarge だ。

4)ギターを弾(ひ)く

大 和言葉なので<琴を弾く>にする。 <琴を爪弾く(つまびく)>は雅語か。細かく観察すると、<琴を弾く>は<弦(げん)>を弾(はじ)くことだ。弦は前方向に<推しはじい>ても音はでる が、通常は弦を手前方向に<ひきはじく>。<ひきはじく>の<ひく>は<弾く>ではなく<引く>でもいい。<でもいい>というよりは<引く>だ。<はじ く>が加わっているが、<引く>動作に変わりはない。
<爪弾く(つまびく)> はもっともらしいが?マークで、爪や爪代わりの<ばち>を使うが、動詞の<摘む(つむ)>が正当ではないか。<摘む(つむ)>の英語は to pluck。 ただし英語では<to play guitar>だ。多分<to pluck the cords of a guitar>とは言えるだろう。

5)退(ひ)く

漢字<退く>は当て字で、<退く>は<しりぞく>で<後ろ方向に下がる>ことだ。これは1)の変形と見なせる。

1)基点(動作主(ぬし)がいる場所> <------ 対象物

対象物が固定し、<引く>道具は特になく、動作主が対象物から離れるように動けば<退く>(ひく、しりぞく)になる。英語は<to draw>と関連のある<to withdraw>だ。

6)引き越す --> 引っ越す、体言<引越し>

<引 越し>と<引く>はあまり関係なさそうに見える。動き、動作は移動(変位)を伴う。<越す>はあるモノを越えて<いく>ので、<引く>というよりは<押 す>だが、いろいろなものを<引き連れて>移動すると見れば、<引っ越す>ということになる、<引く>の原義が生きている。


B.  おす

ワープロ辞書の漢字: 押す、推す。 <推す>はほぼ<押す>の意。 <ひく>にくらべると、純物理的な動き、動作を示すことが多く、比喩的、<慣用>的な使い方は少ない。下記の調査結果内容参照。


調査結果内容

引き上げる (慣用もあり)
押し上がる
押し上げる

引き合う (慣用もあり)
押し合う

引き合わせる  (慣用もあり)

ひきいる 普通<率いる>がつかわれるが、語源は<ひき><いる>だろう。(慣用のみ)
引き入れる (慣用もあり)
押し入る (ほとんど慣用)
押し入れる  体言<押入れ>

引き移す
ひき移る
引き写す  <引き写す>はほとんど聞かないが<引き写し>は聞く。

押し動かす

引き受ける 

押し売る 体言 <押し売り>  (慣用のみ)

引き起こす (ほとんど慣用)
押し起こす

引き落とす (慣用もあり)
押し落とす
------

引き返す
押し返す

引きかえる 引き換える (慣用のみ)、引き帰る
引き代わる (ほとんど慣用)

引き隠れる (慣用)

引きかかる --> 引っかかる (慣用もあり)

引きかける --> 引っかける
押しかける  (慣用)

引き切る  慣用もあり ひっきりなし 突き切る  慣用もあり 突っきる
押し切る  (ほとんど慣用)

引き崩(くず)す
押し崩す

引き消す  ほとんど聞かないが間違いではない。
突き消す  同上
押し消す  

引き越す --> 引っ越す (慣用のみ)

弾きこなす  引くではない

引き込む  -->ひっこむ
引き込める -->ひっこめる (慣用)
引きこもる (慣用のみ)
押し込む
押し込める 

引き壊(こわ)す  あまり聞かないが間違いではない。
押し壊す       同上

------
引き裂(さ)く

引き下がる  (慣用あり)
引き下げる
押し下げる

突き刺(さ)す

引き締まる (ほとんど慣用)
引き締める (ほとんど慣用)

引き従(したが)える <ひく>は<牽く>の意に近い。

引き絞(しぼ)る

引きすがる

押し進む(める)

引きずる

------
引き倒す
押し倒す

引き出す (慣用が多い)
押し出す 

引き立てる (慣用)
押し立てる

押し黙る (慣用)

押し縮(ちぢ)める

引きつく  体言<ひきつけ>(をおこす)。 (慣用)
引きつける  体言<ひきつけ>(が強い、相撲用語)。
押し付ける  (慣用が多い)

引き継(つ)ぐ (慣用)

引き続ける
引き続く  (慣用)
押し続ける

引きつなぐ

引きつぶす
押しつぶす

押し詰める
押し詰まる  (慣用)

引き連(つら)ねる

引き連れる

押し通す(る) (慣用)
 
引きとどめる (ほぼ慣用) <引き止める>が普通。
押しとどめる

引き取る (ほぼ慣用)  (息を)引き取る
押し取る

------
引き直す  (線を)ひき直す

押し流す (慣用あり)

押しなべる 慣用<押しなべて>。 <なぶ>、<なぶる>、<なべる>?

引き抜く  (慣用あり)
押し抜く

ひき逃げる  轢(ひ)き逃げる

引きのける  ほとんど聞かない
押しのける (慣用あり)

引き伸ばす
押し伸ばす

------
おしはかる   推しはかる  <推し>は<推す>だが語源は同じ<押す>の<おす>。

引き剥(は)ぐ
引き剥がす

引き外(はず)す   ほとんど聞かない

引き離す (慣用もあり)
押し離す  ほとんど聞かないが、動きとしては可能

引き放つ  (弓を)引き放つ

引き払う

引き張る --> 引っ張る

押し広げる
押し広める

------
引き曲げる --> ひん曲げる (音便)
押し曲げる

引き混ぜる  ほとんど聞かない

引きまとめる

引き回(まわ)す   (慣用もあり)
押し回す

引きむしる

引き戻(もど)す  <戻す>は<手前に>の方向への動きなので、<突き戻す>は矛盾になる。
引き戻る
押し戻す

-----
引き破(やぶ)る突き破る  新慣用候補 Breake Thru 

引き寄せる  
押し寄せる  

------
引き分ける (ほぼ慣用)
押し分ける 

引き渡す (ほぼ慣用)

(以上ポスト ”<ひく>、<つく>、<おす>について” のコピー。一部訂正、削除。下線は今回追加した。)

<引く>が<取る>に似た動作で<引きつける>、<引き入れる>のように<近づける>の意が基本的にある。一方<押す>は<与える>に似た動作で<押しのける>のように<離す)>の意が基本的にある。だが例外はある。

引き落とす
引き剥がす
引き離す - これはやや特殊な状況
引き分ける

もっとも<離す)>意がありのは<落とす>、<剥がす>、<分ける>の方にある。

一方<押す>は<与える>に似た動作で<押しのける>、<押し出す>のように<離す>の意が基本的にあるが、例外が多い。

押し入る
押し返す
押しかける
押し込む、押し込める
押しつける
押し寄せる  

以上は<xx に yy を押し入る、返す、かける、込む、つける、寄せる>のように対象(xx に)が必要で、対象から見れば<近づいてくる>になる。これも<近づける>の意は<入る>、<返す>、<かける>、<込める>、<寄せる>の方にある。

 (引き続く予定)



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Sunday, November 2, 2014

<払う>は<支払う>だけではない


ドイツ語の接頭辞<ab->相当の日本語動詞-5

<しはらう>が<支払う>と書くが、<支>は変な当て字でもとは大和言葉の<する>の連用形<し>で<する>+<はらう>だ。この<はらう(払う)>は<売り払う>の<払う>で<し>+<果たす>、<尽くす>、<切る>、<終える>のような意味だ。<する>は古語に近いが<なす>という言い方があり、<なしはらう>ともいえる。関東方言では<なす>だけで<借金を返す>の意がある。<はらう>は多義語で、手もとの辞書によると四つの少しずつ違った意味がある。相当こなれた大和言葉と言える。

1)<火の粉をはらう>ような動作の<はらう>

払い落とす - 飛んで来る火の粉(蜂)を払い落とす。
払いのける
振り払う

(衣服の) ホコリを払う
(相撲の決まり手)すそ払い、露(つゆ)払い
(剣道で)相手の竹刀(しない)を払う(打ち払う)

2) 分離する、取り除く (ドイツ語の接頭辞<ab->の第一、第二義だ。)

厄(やく)払い - 関連語に<お払い箱>がある。

追い払う - 追っぱらう (関東方言か)
掻(か)き払う --> かっぱらう (関東方言か)。<掻く>ような動作で無理やり< 分離する、取り除く>だ。
取り払う  - 取っぱらう (関東方言か)

この<分離する、取り除く>の意の<はらう>はドイツ語の接頭辞<ab->に似てさらに多義語化しており、すっかりする、終える、(ドイツ語の接頭辞<ab->の何番目かの意味だ)。場合によってはすっかりなく / なるなくす、の意味もある(これも<ab->の何番目かの意味だ)。

(部屋を)明(あ)け払う
売り払う - 売っぱらう (関東方言か)
出払う - 出っぱらう (関東方言か)
引き払う
焼き払う

3)支払う

払い込む
払いすぎる
払い離す - 払いっぱなし(関東方言か)にする。
払い戻(もど)す

4)対処すべきものに対して積極的な心構えをする


細心の注意をはらう
考慮をはらう
万全の努力をはらう

このやや長い説明の意味は蛇足だろう。<はらう>自体にこのような意味はなく、<細心の注意>、<万全の努力>の方にこの意味が関係しているのだ。しいて言えば2)との関連で、すっかり(まんべんなく)する + 1)の<はらう>の基本的な動作の意味だ。


さて、<はらう>の複合動詞を調べてみる(すでに紹介したものを含む)。

(部屋を)あけ払う
打ち払う
売り払う
追い払う
切(斬)り払う
し(支)し払う
出はらう
取りはらう
掃(は)きはらう
吹きはらう
拭(ふ)きはらう
振りはらう
焼きはらう
----
払い合う (割りカン)
払い切る
払い込む
払い過ぎる
払い足りない
払いのける
払い戻す
払いよける


推測の域をでないが<払う>は<掃(は)く>、<拭(ふ)く>、<吹(ふ)く>、<振(ふ)る>、さらには<剥(は)ぐ>、<はずす>、<はじく>、<はねる>、<はずむ>、<離す>(は+なす)などの<は行>動詞で関連がありそう。


<払う>関連<は行>動詞の他動詞 / 自動詞ペア

剥ぐ - 剥げる、頭(の毛)禿(は)げる、剥がれる
はじく - はじける  <爆破する>(自動詞、他動詞両用)に相当する適当な大和言葉がないが<はじけとぶ、とばす>
はずす - はずれる
離す - 離れる
---
振る - 振れる、触れる(他動詞のようだが、XX に触れる、で自動詞あつかい>



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