Friday, April 23, 2010

日本語の助動詞


A. 助動詞の定義

助動詞の定義は簡単ではない。 というのは、言語や学者によっていろいろな定義があるからだ。 また、ある定義をすると必ず例外が出てくる。 以下は定義の代わりに日本語の助動詞の現状を述べる。


B. 使われ方

1. 頻繁に使われる。 特に文章より口語で。 助動詞を用いない言い方もある - 名詞や副詞を使う。

2. 本動詞+助動詞の組み合わせで使われる(”だ”のような例外もある)。 英語では助動詞+本動詞。 英語では一つの句の中で助動詞は一種類かつ一度しか用いられないが、日本語では二つ以上の助動詞がよく使われる(日本語の特徴)。

食べられなかったようだ。 られ-可能、受身、尊敬の助動詞; な-否定の助動詞; た-過去,完了の助動詞; ようだ−推量の助動詞

この様な表現を曖昧とするか、含みが多くて良いとするかは各人の判断次第だろう。


C. 意味

英語などではモーダル(modal)(助)動詞とも呼ばれるように義務、可能,許可、意志、蓋然性、願望,などを表すが、日本語では受身(voice)や過去,完了(tense)も、さらに自発-尊敬(れる、られる)、使役(せる、させる)、伝聞(そうだ)、さらには、断定(だ)や否定(ない)も助動詞で表わす(日本語の特徴)。モーダル(modal)をどう定義するかにもよるが、自発、尊敬、使役も日本語ではよく使われる。断定<だ>や否定(打消し)<ない>はもっと頻繁に使われる。 自発、尊敬、使役も含めてモーダル(modal)(助)動詞を英語と日本語を比べてみよう。 受身(voice)や過去,完了(tense)を表す be や have を助動詞とし、義務、可能,許可、意志、蓋然性、願望,などを表す動詞をモーダル(modal)(助)動詞とわけることもある。

モーダル(modal)(助)動詞

義務 - 英語 should, must + 動詞(原型); 
日本語 ねばばならない、なければならない(二重否定,助動詞ではない)、泳がねばならない、
日本語 べきだ、 (例)泳ぐべきだ。
<動詞連体形+義務(名詞)、必要(名詞)がある>もよくもちいられる。

可能 - 英語 can + 動詞(原型); 
日本語 動詞連用形+(が)できる,泳ぎができる 
日本語   動詞連体形+こと+できる、(例)泳ぐことができる
日本語 れる,られる (可能)  泳げれる ---> 泳げる

許可 - 英語 may + 動詞(原型); 
日本語 てもよい(助動詞ではない)、 (例)泳いでもよい  ---> 泳いではいけない (禁止)
              
願望 - May + 主語 + 動詞(原型) ? - 祈願文。 Want や wish は<+ 動詞(原型)>とはならないので、英語では助動詞ではない
 
意志 - 英語 will + 動詞(modal)(助); 
日本語 動詞終止形、 (例)わたしは(どうしても)泳ぐ; 動詞連用形 + ます 

蓋然性 - 英語 may, might, would, could;
日本語 推量の助動詞、だろう、らしい、ようだ、まい、そうだ(伝聞)、助動詞ではないが <かもしれない>


その他の動詞(英語,日本語)助動詞(日本語)

義務 - 英語 need + to 動詞(原型)、 be necessary to 動詞(原型)。 日本語 (する)必要,義務がある。

願望 - 英語 wish; 
日本語 動詞連用形 + たい, (例)泳ぎたい
(注) wishはwish + 動詞(原型)とはならないので、英語では助動詞ではない。 I wish I could ..... のように subjunctive を導く特殊な動詞。

使役 - 英語 make + sb (somebody) + 動詞(原型)、force + sb  + to 動詞(原型); 

日本語 使役(せる、させる)

許可 - 英語 let + sb (somebody) + 動詞
(原型), permit, allow + sb (somebody) + to 動詞(原型); 
日本語 てもよい(助動詞ではない)、(が)できる

援助 - 英語 help + sb (somebody) + 動詞
(原型), help + sb (somebody) + to 動詞(原型)
英語では to がつくつかないが区分の重要な点で、to がつく動詞はたくさんあるが、to がつかない動詞はかぎられる。 意味に関係なく to がつかない動詞を助動詞とよぶこともできよう。


D. 中国語の助動詞

中国語の助動詞(の分析、解説)は多分に英語文法の影響を受けているようだ。中国語の助動詞は大体英語の(modal)(助)動詞に対応している。

能力の意味を表す助動詞には主に“能(能够)”“可以(可)”, “会”がある。

願望や意志、意欲を表す助動詞には“想”, “要”,  “愿意”,  “肯”, “敢”などがある。

義務や必要、当然を表す助動詞には“要”, “得”, “应该”,  “该”などがある。 
”要”は未来にも使われ(明天要下雨了)多義語だ。“应该”は蓋然性にも使われる。


(特色) 
1) 英語と同じく助動詞+本動詞の組み合わせで使われる。 
  但し、中国語には to に相当する語がなく、かなり自由に動詞+動詞の組み合わせが可能。

2) 一般動詞と違い、了, 过, 着(アスペクト助詞)と一緒には使われない。

E. 問題点

1. 日本語には用言、体言の大区分があるが、助動詞の語尾変化を見ると、語尾変化の多い用言のようなものもあり語尾変化の少ない体言のようなものもある。 助動詞は用言、体言の区分にしたがわない、同じ仲間とみなせない語が助動詞となっている。 助動詞は動詞、用言の仲間とした方がよく、したがって、活用があるべきだ。

日本語に補助動詞の一群がある。 生態的には動詞と助動詞の中間, あるいは助動詞予備軍だ。


F. 助動詞的な動詞

1. 英語

依頼 - 英語 ask (require, request) + sb (somebody) + to 動詞(原型); 

日本語 (する)よう頼む、お願いする

名付け - 英語 call + st (something) + (as) 名詞; 

日本語 ..... と呼ぶ、となずける

維持、保持 remain + 動詞過去分詞(ed) (例) remain seated;

日本語 ..... (ままに)しておく

維持、保持  stay + 動詞過去分詞(ed) (例) stay tuned; 日本語 ..... (ままに)しておく

2. 日本語

日本語に複合動詞(動詞連用形+動詞)、補助動詞(....(し)て+動詞)、の一群がある。 生態的,歴史的には動詞と助動詞の中間,あるいは助動詞予備軍だ。

複合動詞は動詞+動詞(動詞連用形+動詞)で、”無限”の組み合わせ(組み+合わせ)があるが、どんな組み合わせでもよいというわけでわない。

立ちあがる − 立ち下がる(?)
飲み下す − 飲み上げる(?)
転げ落ちる − 転げ上がる(?)

補助動詞は ”て” が先の動詞の後に入るが, 汎用性があり、またこれの続く後の動詞はよく使われる動詞で助動詞的な使われ方だ。

補助動詞 ....(し)て+動詞

.....  (し)てあげる - to do something for you
.....  (し)ておく (準備) - to have (keep) ......ed
..... (し)てある (状態) - to have (keep) ......ed
..... (し)てくる to come, be coming, be becoming (なってくる)
.....  (し)てくれる - to do something for me
..... (し)てしまう - to make something done (finished)
..... (し)てみる (試行) - to try to do
..... (し)てもらう - to make something done for me
..... (し)てやる - to do something for you
..... (し)てゆく - to go, be going, be becoming (なってゆく)

English are also very basic words: be, have, go, come, do, make

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以下の語は特に名前や定義がないようだ。

..... (し)に行く (意志、未来) − (し)に行った (過去未来)
..... (し)にくる (意志、未来) − (し)に来た (過去未来)


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