Wednesday, August 26, 2015

<ケガをする>について


以前に別のポストで<財布をなくす>に検討したことがある。<なくす>は他動詞だが、<なくそう>として<財布をなくす>人はまれだ、というようなことを書いた。<ケガをする>も同じようなことが言えそうだ。また<する>についてもまた別のポスト ”<する>は他動詞、自動詞、いったい何だ?” で検討したことがある。<ケガをする>について検討してみる。

<ケガをする>に似たような表現には

損をする: <損する>がふつう。反義語:得をする、得する。<損>は漢語だ。<得>も漢語だろう。北京語では<de>、広東語では<dak>。<d>はソフトな<t>だ。
失敗をする:<失敗する>がふつう。反義語:成功する、<成功をする>とはあまり言わな。 <成功>は漢語だ。
間違いをする:<間違える>がふつう。
ミスをする:<ミスる>というのがある。
ドジをする:<ドジをふむ>、<ドジる>がふつう。
ヘマをする:<ヘマる>というのははまだないようだ。
うっかりする:  <うつ>関連か。

がある。<うっかりする>はやや近いが、その他は<ケガをする>と<財布をなくす>にある共通点は薄いまたはないようだ。

<ケガ>は漢字では怪我と書くが、何のことだかよくわからない。私が愛用するインターネット中英(漢英)辞典(http://dict.cn/en/)にはない。怪我の<怪>は<很奇怪>としてよく聞く。<奇怪>は<おかしい>、<わけがよくわからない>、<不思議だ>、<変だ>、英語で言えば strange の意で、<奇>も<怪>も同じような意味だ。奇術の<奇>、<怪人二十面相>の<怪>だ。

<怪我の功名>という言い方があるが、これは<好ましくない状況、さらにはいったん失敗や不利に陥った状況が転じて得られた、思いがけない、予期せぬ、意外な功名>といった意味だ。<災い転じて福となす>に近いようだ。現代中国語では<意外>は<事故>の意味だ。少なくともここ香港では、交通意外=交通事故。以上からすると<怪我>の意味はやや複雑で

1) 現在の主な意味 -負傷。 
2)わけがよくわからない、思いがけないこと。
3) 思いがけない好ましくないこと

だが<怪我の功名>はもともと1)、3)の意味はなく、簡単な<思いがけない功名>であったのが<災い転じて福となす>と絡んで、現在のような意味になった可能性がある。

<怪我>が漢語由来かどうかわからないが、<ケガす>という語があるが<けがす>、<汚す>、<穢す>と書いてしまうと、<けが>と関係がなさそうになるが<けが>、<けがす>は関連があろう。<けがす>には<けがれる>という対応自動詞がある。名詞(体言)は<けがれ>で、<けがれる>の連体形の体言化だ。

<ケガをする>は<ケガする>ともいうが<損する>、<間違える>ほど一般的ではないようだ。<ケガする>は<足をケガする>ともいうので<ケガする>は他動詞ということになるが、<足をケガをする>とは言わないのは文法にかなっている。だが<足をくじく>、<足を痛める>はいいので、何か変だ。<ケガをする>とは一体何なのか?

漢語+する

失敗をする - 失敗する
成功をする - 成功する
勉強をする - 勉強する

損をする - 損する
得をする - 得する

<ケガをする>は<ケガする>でもいいので、<怪我>は漢語由来の可能性が高い。

大和言葉+する

ママゴト遊びをする - 遊びをする(ダメ) - 遊ぶ

身体関連では

まばたきをする。<ま>は目<め>のナマリ。まなこ、まぶた。

これも<目をはたくをする>はダメだ。<まばたき>は自分でコントロールができるが、ふつうは無意識の動作だ。

いねむりをする

<ねる>との違いは<いねむり>無意識でする、またはときによっては<ケガ>と同じで、予期せぬ好ましくないことだ。いねむり運転は事故、怪我につながる。

あくびをする

<あくび>は必ずしも<好ましくない>わけではないが予期しない動作だ。

咳(せき)をする

これも予期しない動作だ。<咳が出る>ともいう。<出る>は自動詞。

身体関連の表現は各国語によって違い、文法上面白い調査対象。日本語では<ケガをする>と言うが、

英語 - to get hurt  (受け身表現)
ドイツ語 - sich weh tun (weh は<痛い>形容詞)

このポストは<sich weh tun>に出くわして調べた後に書いたもの。


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